2019年のプリツカー建築賞(以下、プリツカー賞)が5月24日、磯崎新氏に授与される。この10年間で日本人の受賞は4組目。受賞者の多さは海外進出のためのブランド力となっている。しかし、さらなる飛躍のためには、日本建築界の強みを客観的に知っておく必要がある。 海外の建築界に詳しい4人の専門家に「日本建築界の見え方」を聞いた。2人目は、1970年代から米国を拠点に設計活動を展開し、1995年からハーバード大学の終身教授職も務める森俊子氏だ。(インタビューは2018年10月の来日時に、東京・六本木の国際文化会館で行った)

森俊子氏。1976年にクーパー・ユニオン大学建築学科を卒業後、ニューヨークのエドワード・ララビー・バーンズ建築事務所に就職。1981年に独立し、Toshiko Mori Architect PLLCを設立する。1995年からハーバード大学の終身教授職を取得し、2002年から2008年には同大学の建築学部長を務める。米国芸術院アカデミー賞など受賞歴多数。代表作にアフリカ・セネガルの「文化センターTHREAD」(2015年)など(写真:鈴木 愛子)
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 日本の建築設計は世界的に見てどれくらいのレベルだと思われますか。

 世界一ですよ。

 はっきりと、世界一ですか。

 問題無く、世界一だと思います。

 我々は日本にいるからか、例えばここ10年間でプリツカー賞を数年に1度の頻度で日本人が受賞しているのは、もらい過ぎなんじゃないか、日本びいきではないかと思ってしまうのですが……。

 もし「一番エキサイティングな建築を選びたい」と自然に考えたら、結果的に日本の建築が多くなってしまうのは何の不思議も無いと私は思います。

 「エキサイティング」というのは、具体的にどういう点をそう思われるのですか。

 まず、デザインが斬新であること。それから空間のレベル、質が高いということ。そして、時代に沿ったものをつくっているということでしょうか。

 プリツカー賞だけではなく、最近では長谷川逸子さんが、英国のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの「ロイヤル・アカデミー建築賞」第1回受賞者に選ばれました。

(関連記事:「男性優位の建築界で闘い英国の栄えある賞に、長谷川逸子氏」)。

 長谷川さんは、古い友人なんですけれど、あれは本当にすごいことなんですよ。でも、日本のメディアはあまり取り上げないと、彼女は悲しんでいました。「おめでとうと言ってくれるのは海外の人たちばかりよ」と。

ロイヤル・アカデミー建築賞のメダルを首に掛ける長谷川逸子氏。展示とレクチャーのスペース「gallery IHA」として開放している元事務所の1階で(写真:山田 愼二)
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 確かに、プリツカー賞に比べるとあまり話題になっていませんね。メディア側の人間として、反省するところはあります。

 反省してください(笑)。長谷川さんは素晴らしい作品を設計なさっていて、今の時代への影響も大きい、特に、「山梨フルーツミュージアム」(1995年)は、あれが無ければ今の3次元の造形の流れは生まれなかったと言えるくらい、大きなインパクトを残した作品だと思います。

「山梨フルーツミュージアム」(1995年)。3つの鉄骨ドームがある。鉄骨の接合部は、片側にあらかじめワンサイズ小さなパイプを仕込んで溶接している。英国で特に話題になったプロジェクト。アラップが構造設計を担当した(写真:三島 叡)
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