塩漬けになったERPの移行先となる製品のほとんどは、市場に登場して数年内のいわば新製品だ。前身となる製品の機能を引き継ぐ一方で、クラウドやAIなどの新技術を取り入れ大きく進化している。塩漬けERPの刷新を考える場合、移行先となる製品の進化を理解することがカギとなる。

 特に2000年前後にERPを導入した企業の場合、移行先となるERPは別製品と言っても過言ではないほどの進化をしているケースがある。導入してそのまま塩漬けになっているERPは、いわば「浦島太郎」の状態といえる。

 今、急速に進むのがERPのクラウド化だ。欧州SAPの「S/4HANA」や米オラクル(Oracle)の「Oracle ERP Cloud」のように、外資系のERPを中心にクラウドシフトが進んでいる。

ERPの進化のポイント
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 最も顕著なのがオラクルだ。同社は「Oracle EBS」や「PeopleSoft」といった既存のERPのバージョンアップを年1回の頻度で継続する一方で、Oracle ERP Cloudを主力製品と位置づけ、Oracle EBSやPeopleSoftからの移行を促している。

 機能強化もOracle ERP Cloudを中心に行っており、「新機能の中には、ERP Cloudでのみ提供するケースもある」(日本オラクルの加藤祥平コンサルティングサービス事業統括コンサルティング営業本部クラウドソリューション営業部長)という。

 新製品をクラウドのみで提供するオラクルに対し、SAPはハイブリッド戦略を採る。従来通りのオンプレミス版に加え、S/4HANAのSaaS版「S/4HANA Cloud」も提供する。S/4HANAの機能強化は、クラウドファーストの方針だ。年に数回クラウド版のS/4HANAをバージョンアップし、クラウド版の新機能をまとめて、年に1回オンプレミス版にバージョンアップで反映している。

ERPの不足機能はSaaSで補完

 クラウドシフトと同時にERPベンダーが強化するのが、ERPの機能を補完するSaaSの提供だ。ERP本体に機能を追加するのではなく、周辺機能を提供するSaaSと連携することで、新機能を提供したり、不足している機能を補完したりすることを目指す。

 SAPの場合、経費精算の「Concur」や調達支援の「Ariba」、タレントマネジメントの「SuccessFactors」など、企業買収で手に入れた製品を、ERPの機能を補完する製品として位置づけている。

 オラクルも同様だ。マーケティングを支援する「CX(カスタマーエクスペリエンス)Cloud」や、管理会計を支援する「Planning and Budgeting Cloud Service(PBCS)」などを連携用のSaaSとして打ち出す。

 クラウドシフトが進むERPだが、ERPパッケージそのものも進化している。特にERPベンダーが注力するのが、製品機能にAIを取り込む戦略だ。SAPは2018年にAIやRPAを製品に組み込むことで、「2022年までにERPの入力業務を50%自動化する」と宣言。会話型UI( ユーザーインターフェース)の採用や、機械学習を利用した入力支援機能などを提供する。

 オラクルもAIを取り入れたERPの新機能群「AI Apps for ERP」の提供を表明。過去のデータから取り引き先のリスクなどを提示する「SupplierRecommendation」や、画像データを使った経費処理機能「Expenses Chatbot」を発表している。

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