新薬開発が生死を決める製薬業界。新薬開発は特許が前提で、将来の成長のためにはコンスタントな特許出願が必要となる。日本の大手製薬会社も過去10年で年平均10%ずつ特許の出願・取得を増やしている。

 一方で、売り上げの伸びはあまり期待できない。先進国では医療費負担抑制の圧力が強く、過去10年で見た大手の売上高成長率は年平均2%しかない。予算が限られる中、順調に特許出願を増やしている企業の共通点は、①強固な自社開発力、②ライセンスアウトによる開発費負担回収の極大化、である。

 まずは、自社の得意分野での開発力をさらに高めること、ライセンスアウトなどを通して回収した開発費を新規開発に振り向けていくこと、特許出願により知財の保全を図ること、これらが三位一体で好循環を実現している企業がしっかりとした特許ポートフォリオを構築できているといえる。

[1]製薬会社大手7社の特許戦略

売上高、利益が伸びない中、特許出願は2極化

 製薬大手7社(中外製薬、第一三共、協和キリン、武田薬品工業、アステラス製薬、塩野義製薬、エーザイ)が保有する国内特許の出願件数はおおむね順調な増加を続けており、2017年までの10年間では年平均10%の高い伸びを示している。ただし、伸び率は二極化が進んでおり、最も高い中外製薬が15%と高い。武田薬品工業と塩野義製薬、第一三共、協和キリンは高率を維持する一方、エーザイとアステラス製薬は相対的に低い。特にアステラス製薬は特許出願件数が伸びておらず、苦しんでいる(図1)。

図1●製薬大手7社の特許出願件数(国内)
(PatentSQUAREを基に正林国際特許商標事務所が作成)
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 新薬の開発には特許の出願が前提となるが、そのためには巨額の研究開発費を必要とする。一方で、現状、売上高や利益を増やすことは難しい。特に、先進国では医療費負担抑制の圧力が強く、製薬大手7社の売上高(合計)はここ10年で年平均2%程度しか伸びていないというのが実情だ。研究開発費は1%、営業利益に至っては最終的に横ばいと、低成長が続いている(図2)。

図2●製薬大手7社の売上高・研究開発費、営業利益
(出所:各社業績データ)
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 研究開発予算が限られる中、特許出願を増やしている企業の共通点は、①強固な自社開発力と②ライセンスアウトによる開発費負担回収の極大化である。やはり頼りになるのが自社の得意分野での研究開発だ。強固な自社開発力は、結局、安定的に特許出願につながっている。一方、海外企業の買収は必ずしも特許の伸びにつながっておらず、知財貢献には長時間を要する現実がよく分かる。

 ライセンスアウトは自社販売と比較して売り上げの拡大と販売費の削減につながり、キャッシュフロー(CF)の増加を実現する。そのためには魅力ある新薬の開発が必要で、強固な自社開発力と表裏一体を成す。これらが三位一体で好循環を実現している企業がしっかりとした特許ポートフォリオを構築できているといえる(図3)。

図3●特許出願を増やしている企業の共通点
三位一体による好循環をつくっている。(出所:筆者作成)
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