「リアル」な経済活動に金融理論を応用する動きが広まっている。金融工学のオプション理論を応用した「リアル・オプション」は、事業評価などに基づく意思決定において、有効な分析手法として使われている。他方、定量的なリスク管理や最適化のために「リアル・ポートフォリオ(Real Portfolio)」の考え方を取り入れることも有効である。しかし、特許などの知財単位の知財ポートフォリオの考え方は広まっているが、事業単位のリアル・ポートフォリオを経営判断などに適用することは行われていない。背景として、事業分野を分散しさえすれば全体的な事業収益の変動リスクが軽減されるといった定性的な判断に依存しているように思われる。定量的な事業価値評価を通してリアル・ポートフォリオ戦略を実践し、最適化することにより、事業ポートフォリオ・マネジメントに基づく経営戦略を展開することができる。

 例えば、複数の新規事業や海外事業に関して、各事業計画単独で見れば同様な期待収益、リスクであっても、事業ポートフォリオとして捉えれば、事業全体としてのリスク低減・収益安定性の観点で各事業計画の相対的な優劣に差が出る場合が多い。限られたリソースの下で最適化された事業ポートフォリオの期待収益率を、資産に係る加重平均資産収益率(理論的には加重平均資本コストと同値)などを踏まえた期待利益率に合わせて事業の組合せを選択すれば、利益率の目標をクリアしつつ事業ポートフォリオとしてのリスクを最小にし、最適な事業ポートフォリオとすることができる。

 一方、事業規模のスケールメリットを前提とすれば、限られたリソースの下では事業分散により規模が小さくなるため、事業分散の度合いと利益率との関係はトレードオフとなる。この場合、自社で大規模な設備投資などを行うことなく、知的財産権のライセンスなどを組合せて事業ポートフォリオとしての市場変動リスクなどを軽減することができる。このように、「IPオーバーレイド・リアル・ポートフォリオ (IP Overlaid Real Portfolio)」戦略とは、独占的排他権である特許権のライセンスなどの知財戦略を事業戦略に重ね合せることにより〔IPオーバーレイ(IP Overlay)〕、リスクを定量的に管理しながら事業全体をリアル・ポートフォリオとして包括的に最適化を図る戦略である。

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