「官公庁と民間で情報システムに支障があったという報告は受けていない」。令和の時代が幕を開けた2019年5月1日午前9時過ぎ、菅義偉内閣官房長官は改元に伴うシステム改修について「安全宣言」を出した。この時点で官公庁には一部で改修が必要な情報システムが残ったが連休返上で作業を進め、「(2019年5月7日の)開庁日までに作業を終了する予定」とした。

 宣言通り、世上をにぎわすような重大なトラブルは発生しなかった。だが100点満点とはいかず、子細に見るとトラブルはあった。例えば改元に伴い、5つの自治体で改元日の前にトラブルが続出した。今後の教訓とするために、障害の事象と原因を探った。

世田谷区は「平成31年」を「平成3元年」と印字

 最初のトラブルは政府が「令和」を発表した2019年4月1日より前に発生した。東京都世田谷区が2019年3月上旬に区民に送った通知書類に、日付が「平成3元年」となるミスがあった。2019年3月11日から順次、おわびの文書を送付して、「実害は無い」(世田谷区)としている。

 ミスがあったのは私立幼稚園に通園する子供を持つ保護者に補助金を交付する通知書類だ。「通知書類を起票した日付」と「補助金の振込日」の2カ所について、「平成31年」と印字すべきところを「平成3元年」と印刷した。対象世帯に約1万通を発送したという。

「平成31年」と書くべきところを「平成3元年」と誤記して発送した「私立幼稚園等保護者補助金交付決定通知書」
(出所:世田谷区)
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 原因は通知書類の印刷を委託した印刷業者のデータ処理ソフトウエアの誤りだった。まず世田谷区が西暦のデータを印刷業者に渡し、印刷業者はデータ中の西暦を和暦に変換するプログラムで処理してから印刷する手順だった。印刷業者はこのプログラムに和暦の一の位が「1」だったら「元」に変換するロジックを組み込んでいた。しかし、十の位を考慮していなかったため、ミスが生じた。

 世田谷区はデータについて、内容の正しさを確認してから印刷業者にデータを渡した。世田谷区と印刷業者はテスト印刷の結果をそれぞれ確認したが、テストデータが和暦表示の正しさを確認するには適さない、2019年とは異なる西暦を使っていたため、バグが表面化せず、発見を漏らしたとしている。

甲賀市はハンディー端末の検針データを消失

 次のトラブルも令和発表より前のことだ。滋賀県甲賀市が上下水道部のシステムで新元号対応を進めるなかで発生した。2019年3月15日から18日にかけて、甲賀市の検針員が使う、検針記録と検針票印刷の機能を備えたハンディーターミナル(端末)に不具合があり、表示日付を誤った検針票を1万2979枚配った。

 具体的には「水道料金4月分 口座振替予定日」を「31年5月7日」とすべきところを「1年5月7日」と表示した。もともと元号を表示していないため、「1年5月7日」は必ずしも間違った日付ではなく、市民からのクレームも無かった。だが、甲賀市は内部ルールで、2019年4月以前に出す文書には平成の日付を表示すると定めていた。市内に住む市職員がルール違反を指摘してミスが判明した。

「31年」と書くべきところを「1年」と誤記した「使用水量等のお知らせ」
(出所:甲賀市)
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 甲賀市は上下水道のシステム運営を委託しているNTTデータのグループ会社である日本電子計算に連絡し、日付表示をルール通りに修正しようと、ハンディー端末のプログラム修正を試みた。ハンディー端末に記録されている検針済みデータについては、プログラム修正前にサーバーにバックアップし、修正後にリストアする作業が必要になる。

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