全日本空輸(ANA)グループが全ての職場の全ての業務でデジタル技術の活用に乗り出した。1000億円を投じてIT基盤も刷新した。将来を見据え、航空産業の枠組みを打ち破る先行投資も進める。国内最大手の航空グループにおけるデジタル戦略を追った。

 ANAグループが全社で進める現場におけるオペレーション改革には「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」もある。ソフトウエアのロボット(ソフトロボ)を使ってパソコン作業を自動化する技術である。

 2017年春にRPAの取り組みを始め、2019年3月時点で52体のソフトロボが稼働している。導入ペースは増しており、2019年1~3月は12体が新たに稼働した。2020年3月までにさらに100体の稼働を目指している。

図 RPAの導入実績と主な導入例
RPAの導入規模が加速度的に増加(注:実績値は2017年度以降の累計)
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 RPAを活用する現場は空港や整備、経理、マーケティング、人事など多岐にわたる。RPAによる現場業務の削減効果は推計で1万4000時間に上る。

 例えば整備部門は保証期間内に故障した航空機部品について、保証金を請求する業務にRPAを導入した。従来は複数の整備系システムからデータを取得してExcelで集計し、CSVファイルに変換してから米ファイルメーカーのデータベースソフト「FileMaker」に登録するという流れだった。

 RPA導入の旗振り役を担う野村泰一デジタル変革室イノベーション推進部部長は「少額な保証金の請求だと割に合わず、請求を見送っていたケースもあったようだ」と話す。RPAにより作業時間を累計1000時間ほど削減でき、少額の保証金の請求も可能になったという。

大型システム以外の業務に注目

 「大型の業務システムは基幹業務の課題を解決する。大型システムが対象としない業務の課題は、社員の努力でカバーしてきた。AI(人工知能)など新たな分野に力を注ぐより、システムがカバーしていない業務に目を向けるほうが先決だと考えた」。RPA導入を進める意義を野村部長はこう話す。

 DXと同様にRPAもやみくもに導入せず、手順を踏んで戦略的に進めていくのがANAグループの特徴だ。大前提として、RPAの導入を現場任せにせず、IT部門が主導する体制を採る。

図 ANAグループにおけるRPA導入の手順
IT部門主導で「ダンゴムシ」を見つけ、RPAを導入
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 野村部長はその理由を次のように説明する。「短期的にはオペレーションの課題が解決したとしても、導入ノウハウやRPAの開発・運用にまつわる一連のデータがANAグループ内にたまりにくい。中長期的には管理者不在の野良ロボットや、役割に重複のある複数のロボットが社内にはびこり、現場で対処できなくなってからIT部門に助けを求めに来るようになる」。

 IT部門主導にしたとしても、待っているだけでは導入は進まない。そこで野村部長らは非効率な業務が潜んでいそうな部門や業務を「ダンゴムシ」と名付け、そこにIT部門側からアプローチするようにした。

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