政府が成長産業と位置付けて力を入れているスポーツビジネス。その中でも「スタジアム・アリーナ改革」は、大きな期待を寄せられている分野である。先行する米国の事例から明らかなように、ビジネス成長の鍵を握るのがICT(情報通信技術)である。

 スタジアム・アリーナ向けのICTビジネスで世界のトップランナーと言えるのが、米シスコシステムズ(Cisco Systems)である。同社は世界35カ国以上の350を超すスタジアムやアリーナで、ネットワークを活用したソリューションを提供している。

 日本法人のシスコシステムズ合同会社で、東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部 本部長を務める赤西 治氏は、「第2回 スポーツ ビジネス 産業展」(2019年2月27~3月1日)のセミナーで、「ICT化が加速する世界の最新スタジアム・アリーナ」と題して講演、世界の最新スタジアム・アリーナ事例を中心に、ICTによる顧客体験の向上、スタジアム・アリーナの経営への貢献について紹介した。

「第2回 スポーツ ビジネス 産業展」で講演するシスコシステムズ合同会社の赤西治氏
(写真:浅野智恵美)
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“ながら見”世代を、どうスタジアムに呼ぶか

 赤西氏は講演の冒頭、スタジアム・アリーナの変化に触れた。米国では1960~1970年代に多数のスタジアムが建設されたが、この当時は「どれだけ座席数を確保できるか」に重きが置かれていたという。

 1990年代後半から2000年ごろには、建設から約30年経ったスタジアムの建て替えラッシュが始まる。ここにマーケティングのコンセプトを導入し、空間的な価値向上、命名権などを積極的に取り入れた。当初のように単に座席を多く設けるのではなく、高額チケットによる収益性の向上や、VIP向けのラウンジなどが積極的に作られるようになった。

 赤西氏はこう話す。「スタジアムに来て、3時間ずっと試合を見ている人も、そうでない人もいます。試合を見るだけでなく“ここに来たら何か楽しいことがある”という環境を空間として演出し、価値を高めていく。ファンのことをもっと知ろうとする取り組みが、1990年代から2000年代に始まっています。ここにどうICTを絡めていくのか、という動きが2010年代ごろから出てきました」

 「日本だけでなく海外でも同じですが、野球にしかりバスケットボールにしかり、若い人たちはなかなかスタジアムに足を運んでくれません。決してスポーツに興味がないわけではなく、今はスマートフォン(スマホ)で試合結果はいつでも見られます。動画配信などもありますし、プッシュ通知にしておけばタイムリーに欲しい情報を得られる。若い人たちに足を運んでもらうためには、モバイルを使ってどういったことをしていくのかが、大きなテーマになっています」(同)

 「よく“ながら見”と言われますが、家でテレビを見ている最中もスマホをいじっているということが、若い人たちには当たり前になっています。スタジアム・アリーナに来て試合を見ていても、同じです。そういう人たちに向けて、どのようなサービスを展開していくのか。モバイルエンゲージメントは、海外でもキーワードの1つです」(同氏)

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