「日本人の目をアフリカに向けさせたい」――こんな使命感を抱き、2019年から戦いの場をアフリカ・ザンビア共和国に移したプロサッカー選手がいる。Jリーグ通算284試合に出場し、名門・横浜F・マリノスなどでも活躍した経歴を持つ中町公祐選手だ。

「マリノスから契約延長のオファーも届いていた」という中、なぜ中町選手はアフリカと日本をつなげようとしているのか。そこには、いちアスリートを超えた社会貢献への想いがあった。中町選手へのインタビューを通してその想いをお届けする。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)(取材日:2019年7月8日)

ザンビアン・プレミアリーグのゼスコ・ユナイテッドの試合での中町選手
(写真:NPO法人Pass on)
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収入大幅減よりもアフリカ移籍を優先した理由

2019年1月、中町さんはご自身のSNSでマリノスを退団すること、アフリカ・ザンビアへの移籍を模索していることを発表されました。ファン・サポーターにとっては青天の霹靂(へきれき)とも言えるニュースでしたが、なぜ新天地にアフリカを選んだのでしょうか。

中町 僕がアフリカと関わるようになったのは、友人が運営する「Doooooooo」というNPO法人を通じて、1試合勝つごとに5つのサッカーボールをアフリカの子どもたちに送る「PASS ON PROJECT」という取り組みをスタートした2013年のことです。その後もプロジェクトは続き、2018年にはガーナを訪れ、初めてアフリカ大陸の地を踏むことになりました。

 同時にその頃、選手としての今後も考えるタイミングが訪れていました。マリノスは僕にとって特別なチームであり、あのチームでサッカーをする幸せや喜びを強く感じていました。実際に契約延長のオファーもいただきましたし、そのままマリノスでサッカーを続ける選択肢も素晴らしいものだと思っていたのですが、一方で、キャリアが終盤に差し掛かっている中で、アスリートとして自信を持ってプレーできる間に海外、それも以前から縁を感じていたアフリカでプレーしてみたいという想いも強く持っていました。そこで、アフリカへ移籍することを決断したんです。

ザンビアに移籍したことで給与も大幅に減ったと聞いています。収入面などを考えると簡単な決断ではなかったと思います。

中町 年俸はJリーグ時代と比べて10分の1ほどに減りました。ただ、僕にとってサッカーは自分磨きのツールなんです。Jリーガーとしてそれなりに良い給料をもらって、自分としてやれることも分かってきた中で現状に甘んじるのではなく、自分が魅力を感じることをしたいと思っていました。

 僕がアフリカに強い想いを持っていたのは、2015年に生まれてすぐに亡くなった長男が関係しています。先ほど触れたNPO法人「Doooooooo」が整備に携わった学校のすぐ隣にあるサッカーグラウンドに、長男の彪護(ひゅうご)の名前を取って「ヒュウゴ・スタジアム」と名付けてくれたんです。グラウンドの横にある木の下には息子の骨を埋めています。だから、アフリカは僕だけではなく家族にとっても大切な場所なんです。

 2018年末には自分自身でも「Pass on」というNPO法人を立ち上げました。この法人は日本とアフリカをつなぐ事業や、アフリカの医療機関の支援などを行うもので、サッカーだけではなくこうした活動にも力を入れたかったからこそ、アフリカを選択しました。

ザンビアン・プレミアリーグのゼスコ・ユナイテッド所属の中町公祐選手。群馬県立高崎高校卒業後、湘南ベルマーレに入団。同年に慶応義塾大学に現役合格し、同大初の在籍しながらのJリーガーとなる。湘南ベルマーレ所属4年で、66試合に出場するも2007年戦力外通告。後にサッカー部に入部し、1部昇格に貢献。大学卒業後、アビスパ福岡に入団し、チームの主力として活躍し、キャプテンも務める。2012年より横浜F・マリノスに移籍し活躍の場を移し、クラブの選手会長や日本プロサッカー選手会の副会長に選任され、日本サッカー協会やJクラブと共にJリーグの未来に貢献する。2019年からはゼスコ・ユナイテッドに移籍。慈善活動にも積極的に力を入れており、アフリカ大陸にボールを送る「PASS ON PROJECT」や、神奈川県内のNICU(新生児集中治療室)出身者やその家族をホームゲームに招待する「ひゅうごシート」を実施。NPO法人Pass on の代表理事として活動するとともに、現役選手初のJFA国際委員に就任するなど、ピッチ外でも活躍している。
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