近年、異業種でビジネス経験を積んだ人材がスポーツ業界に参入するケースが増えている。例を上げれば枚挙にいとまがないが、今注目を集めているのは、新興のプロスポーツリーグで活躍する二人の経営者だ。ひとりはプロバスケットボールのBリーグ、千葉ジェッツふなばし代表取締役会長の島田慎二氏。もうひとりはプロ卓球のTリーグ、琉球アスティーダ代表取締役の早川周作氏である。

 日経BPの「SPORTS Tech&Biz Conference」(2019年3月20日)では、両者が登壇するパネルディスカッションを開催した。起業家としてビジネス界の一線で活躍した経験を持つ2人がスポーツビジネスの世界へ身を投じることになったきっかけや異業種経験者から見たスポーツ界の課題などについて語り合った。モデレーターは早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘(しょうへい)研究員の上野直彦氏が務めた1

*1 千葉ジェッツふなばしの島田氏は2019年8月20日に代表取締役会長に就任。イベント当時は社長

スポーツビジネスは一般のビジネスと変わらない

 島田氏は旅行会社のマップインターナショナル(現・エイチアイエス)に入社して経験を積んだ後、旅行会社やコンサルティング会社を起業した。Bリーグの前身のbjリーグで経営難に苦しんでいた千葉ジェッツにコンサルタントとして関わっていたところ、請われてクラブの経営に携わることになったという。一方、早川氏は、Tリーグのチェアマン・松下浩二氏から相談を受けて琉球アスティーダの代表に就任した。それまでバスケットボールや卓球には縁もゆかりもなかったという両氏だが、異業種でビジネスに携わったからこそ感じる一般企業とスポーツ界の相違点や共通点を感じたと話す。

千葉ジェッツふなばし代表取締役会長の島田慎二氏。1992年マップインターナショナル(現エイチアイエス)入社。1995年に退職後、法人向け海外旅行を扱うウエストシップを設立し、2001年に同社取締役を退任。同年、海外出張専門の旅行を扱うハルインターナショナルを設立し、2010年に同社売却。同年にコンサルティング事業を展開するリカオンを設立。2012年より現職。ジェッツインターナショナル代表取締役、特定非営利活動法人ドリームヴィレッジ理事長、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)理事、2017年9月より、Bリーグ副理事長(バイスチェアマン)就任。2018年3月16日をもって同職退任。2018年3月19日、一般社団法人日本トップリーグ連携機構 理事就任
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 「旅行会社では、『旅行が好きだから』という動機で入社するスタッフが多くいましたが、スポーツ業界もその傾向があると感じています。しかし、扱う商材が好きという理由だけではなかなか事業は拡大しません。そこで旅行会社ではさまざまな経営改革を実施して成長を成し遂げました。だからスポーツ業界に来たときも、スタッフに対して『しっかりとビジネスをやっていこう』と説いていくところから始めました」(島田氏)

 「とはいえ、特別な手法を用いたわけではありません。経営目標や部門・個人ごとの目標を立て、それぞれを達成するためのプロセス管理、モチベーションアップなど、一般的なアプローチです。目標設定などは以前からしていたのですが、『志はあるが術はない』と言えるような状況で、目標に向けて頑張ろうというくらいだったのです」(同)

 「しっかりと売り上げを上げて利益を出し、スタッフに還元し、投資をして強化やお客様に喜んでもらえる環境を作っていく。そして商品価値を高め、持続的な発展を遂げていく。これは一般的なビジネスと同じものですし、やり方によってはどの競技でもうまく回せるはずだと思っています」(同)

 早川氏もこの意見に賛同し、だからこそ「スポーツ=儲(もう)からない」というイメージを変えていきたいと話す。そこで同氏が実施しているのが、選手への報酬を公開することだ。

 「卓球選手がどれだけの収入を得ているかご存じの方は多くないと思いますが、実はドイツやロシアのリーグには年間数億円ももらっているプレーヤーもいるんです。琉球アスティーダの場合、試合出場で100万円、さらに勝てば30万円を支払っています。このように報酬を公開して卓球には価値があることを伝え、卓球選手を憧れの存在にしていきたいのです」(早川氏)

琉球アスティーダスポーツクラブ代表取締役の早川周作氏。大学受験直前に父親が蒸発。新聞配達を経て明治大学に進学。在学中から学生起業家として多くの会社の経営に参画。元首相の秘書として勉強し、28歳で衆議院選挙に出馬。その後日本最大級の経営者交流会を主催。現在はTリーグに参戦している「琉球アスティーダ」を運営する琉球アスティーダスポーツクラブの経営に携わる
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