2019年1月、Jリーグのトップパートナーに新たな企業が名を連ねた。全国で不動産事業やアセットマネジメント事業、クリーンエネルギー事業などを展開する「いちご」だ。同社は東証一部にも上場しているのだが、キヤノンや明治安田生命保険など他のトップパートナー企業と比べると一般消費者にとっては馴染みが薄い。このため、トップパートナー締結のリリースを耳にしたときに首を傾げた人も多いかもしれない。

 だが、いちごがJリーグトップパートナーとなったのは確固たる狙いがあってのものだ。そしてその狙いはこれからのJリーグを大きく変えるものとなるかもしれない。いちごがJリーグを通して目指すものは何か。同社代表執行役社長の長谷川拓磨氏に聞いた。本稿では同氏へのインタビューを前後編でお届けする。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)

建物の価値最大化が「心築」の信条

今年からJリーグトップパートナーとなりましたが、Jリーグファンの中でもいちごのことを知らない人も多くいると思います。まずはいちごの事業内容を教えてください。

長谷川 当社は基本的に不動産に関連したビジネスを展開していますが、(1)心築(しんちく)事業、(2)アセットマネジメント事業、(3)クリーンエネルギー事業、の3つの事業を中心としています。

 中でも我々のコアコンピタンスは(1)の心築事業です。音だけ聞くと「新築」と混同されてしまいがちですが、スクラップ・アンド・ビルドで不動産を造るのではなく、既存の不動産の潜在的な価値を見出し、その価値を向上するために様々な施策を実行するものです。(2)のアセットマネジメント事業は、この心築の考えをベースにした上で展開しているもので、当社では「いちごオフィスリート」「いちごホテルリート」「いちごグリーンインフラ」という3つの投資法人を運用しています。(3)については、東日本大震災の後、不動産業界として既存のビジネスとは違った形で世の中に貢献していこうという考えの下にスタートしたもので、太陽光や風力発電など、サステナブル(持続可能)なエネルギー事業を展開しているものです。

「心築」という概念は他社にはないものだと思いますが、取り組み内容やこの事業に込めた思いについて、もう少し具体的に教えてください。

長谷川 今は世界的にサステナブルな社会を目指す流れですし、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治の頭文字を取ったもの)への取り組みが企業の評価指標となっています。我々も事業を通してこれらのキーワードに取り組んでいこうとしていますが、そのベースと位置付けているのが心築事業です。

 取り組み内容としては先ほど申し上げたように、建物を壊して新しいものを造るのではなく、既存の建物が持つ価値や特徴を確認し、ソフト・ハード両面において当社が持つ不動産技術や運用ノウハウを発揮して価値を最大化するものです。

 これは単に不動産の資産価値を上げるだけではなく、そこに住んでいる方や働いている方、あるいはお客として訪れる方など、不動産に関わるすべてのステークホルダーのためになるソリューションであると考えています。

いちご株式会社代表執行役社長の長谷川拓磨氏。フジタを経て2002年にアセット・マネジャーズ(現・いちご)に入社。ファンド事業、開発事業全般に従事し、不動産部門全体の責任者を歴任。2011年1月より、いちご地所を立ち上げ、マーケットにおいて、活況な中小規模不動産を活用した新規ビジネスを主として取り組む。また、これまでの開発経験を活かし、底地を活用したビジネスも展開。2015年5月にいちごの代表執行役社長に就任
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