2019年5月10〜15日に神奈川県の三浦半島で「ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会」が開かれた。同地での開催は3度目で、最新技術を使って競技を分かりやすく伝える工夫は2018年から着実に進化した。主催者発表で累計約9万人を集めた大規模な大会を通じて、さらなる発展の可能性が浮かび上がるとともに、マイナースポーツならではの厳しさも見えてきた。

 決して天候に恵まれた大会ではなかった。強風が前提の花形競技、スラロームはただの1戦も実施できなかった。会期中唯一、風が吹き上がる予報だった1日は大雨に見舞われ、関係者の期待を押し流した。それでも主催者の発表では、来場者は延べ8万8000人。2018年の4万9000人を超え、目標の7万人をも上回った。数字だけからは大いに成功した大会だったといえる。

ウインドサーフィンW杯が開催
(写真:Carter/pwaworldtour.com/)
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 逆境をついて会場を盛り上げたのは、進化した技術である。とりわけウインドサーフィン自体の改良が大きい。男子が計3回、予選のない女子では計7回ものレースができたのは、ハイドロフォイル(水中翼)と呼ばれる特殊なフィンを採用したおかげだった。水中翼船と同様な原理でボードを海面から浮かび上がらせ、海から受ける抵抗を最小限にすることで、高速な移動を可能にする。

 フォイル競技自体は2018年も開催されたものの、この1年で磨きをかけた道具類が、風速4m/秒を切るような微風でも、時として時速40kmを上回る艇速を実現した。加えて、GPS(全地球測位システム)端末やスマートフォン(スマホ)用アプリ、ドローンによる撮影を駆使した競技の見せ方も、観客を楽しませたことは間違いない。

ウインドサーフィンのボードに取り付けたハイドロフォイル(水中翼)
(写真:今井拓司)
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フォイルを使うことで微風でも時速40kmを超えるスピードも可能になった
富士通が開発したスマートフォンアプリ「GULLCAST」で表示したレース中の様子(画像:富士通&Windsurfing Lab)
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 ただし大勢の観客を呼び寄せたのは、競技の魅力だけだったとは言い難い。会期中の土曜日に3万5700人、日曜日に3万4000人と圧倒的な集客があった理由は、音楽ライブやフラダンスのギネス記録挑戦、電気自動運転バスの試乗といったイベントが目白押しだったおかげもある。

 事実、会場では、なじみの薄い競技の進行状況を、多くの観客がいまひとつ把握していない雰囲気がしばしば漂った。アプリの使い勝手から大会運営の段取りまで、改善の余地はいくつもある。今回の大会での取り組みから、情報技術(IT)を活用してマイナースポーツを盛り上げる工夫の余地を探った。

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