「事業に直接つながらないPoC(概念実証)の実施を禁じている。IT部員には『事業化を前提にしたプロトタイプを作れ』と発破をかけている」。

 これは日経コンピュータ2018年8月30日号の「CIOが挑む」に登場したアフラック生命保険の二見通氏の発言だ。日本企業の間ではPoCが一大ブームといった状況だから、ドキッとした読者も多いことだろう。

 PoCはその名の通り、新しいコンセプト(概念)やアイデアが実現可能かどうかを実証する取り組みだ。「AI(人工知能)を活用すれば、こんなサービスを実現できるのではないか」。そんなアイデアを必要最小限のシステムを作って試してみる。それがPoCであり、実験的な意味合いが強いため「実証実験」とも訳される。

 AIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)など最新のデジタル技術を使って、これまでにないビジネスを作ろうとするわけだから、実現可能性を探ってみるのは企業として当然の判断と言える。多くの企業がPoCに取り組む現状は、デジタルサービスの創出、あるいは全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた先触れとして評価してよいはずだ。

 ところが大手ITベンダーの幹部と話をすると、「PoC疲れ」と言えるようなユーザー事例を聞かされることが増えてきた。顧客企業に「いくつもPoCをやってみたが、いずれもモノにならなかった。この先どうすればよいのか」と相談されたり、「PoCをやってみて、当社にはデジタル変革を主導できるような人材がいないことが分かった」と自嘲されたりするというのだ。

担当者も経営も責任を取らない

 ビジネスにおいて新しい事業を成し遂げるのは容易ではない。むしろ失敗するケースの方がはるかに多いはずだ。とはいえ、いくらPoCに取り組んでも何の成果も得られず、ただ単に「デジタルの取り組みは難しい」と分かっただけの繰り返しでは、デジタルサービスの創出やDXの推進は絵に描いた餅に終わってしまう。

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