IT関係者の中には「デジタルとITの違いは何か」と言葉使いに疑問を持つ人がいる。基幹系システムなどIT部門が管理する既存のシステムの領域がITで、新事業などのビジネスに直接関わるシステムの領域がデジタルといった具合に区分するのが一般的な理解だと思うが、「それは本質な区分ではない」と納得できないらしい。

 確かに新領域と既存領域による区分は便宜的なものにすぎない。デジタルと言っても技術で見ればITと変わりがないからだ。なんとなくデジタルとITを使い分けている人もデジタルという言葉を使う際に、ある種の違和感を感じていることだろう。

 なぜ両者を使い分けるのか。ITよりもデジタルと言った方が、企業の経営者らに関心を持ってもらえるといったIT関係者の方便もあるだろう。だがもっと本質的な理由がある。システムによる付加価値の源泉が今、ソフトウエアからデータに移りつつある。デジタルとはデータが付加価値の源泉となる時代に対応した言葉なのだ。

 データが付加価値の源泉となることに異を唱える人はいないはずだ。産業の垣根を越えて、大量データを集め的確に分析してビジネスに生かした者が勝つ。

 世間を驚かせた2018年10月のトヨタ自動車とソフトバンクグループの提携においても、両社はそんな共通認識の下に手を組んだはずだ。共同出資会社による配車サービスなどから得られるデータをいかに有効活用するかが、自動車の未来を決すると言っても過言ではない。

 実はITという言葉が日本で使われるようになった頃も時代の変わり目だった。30年近く前の平成初期に「ITはコンピューターと何が違うのか」といった疑問の声が上がっていた。ちょうどその頃は、システムにおける付加価値の源泉がハードウエアからソフトウエアに移りつつあった時期だ。

 つまり言葉の変化は価値変化を象徴しているわけだ。その後、ITがコンピューターに代わる用語として使われるようになった。デジタルもITに代わる用語として定着することになるだろう。ITという用語は前時代の遺物になるのだ。

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