グーグルカーを筆頭に、自動運転車の主流は自律型だ。クルマ単体で基本機能の全てを完結する一方で、コストは数千万円と極めて高くなる。スマートフォンでは、多くの機能をクラウドに移して端末の負荷を軽くし、手ごろな価格で多くのサービスを実現した。クルマも同じ。次世代移動通信「5G」とエッジコンピューティングの導入で、クルマの“頭脳”は遠隔側に移っていく。遠隔型の最大の特徴が、車両では難しい圧倒的な計算能力。うまく使えば、クルマを革新できる。

 カーナビに搭載する安価なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と安いアンテナで、誤差10cmと高精度に自車位置を推定する――。

 自動運転技術の根幹である自車位置推定で、常識を覆す技術を開発したのがNTTである。かねて必須とされた高価なLIDAR(3次元赤外線レーザースキャナー)を使わずに、同等の精度を実現する。

 数百万円単位で自動運転車のコストを下げられるかもしれない。開発に携わるNTTネットワーク基盤技術研究所主幹研究員の吉田誠史氏は、「センサーだけで1000万円以上する自動運転車をもっと安くできる」と意気込む。

 実現の鍵を握るのが、遠隔側に設置した高性能計算機である。車両に搭載する安価なGNSS受信機の大きな誤差を、遠隔側の計算機で補正して推定精度を高める。「頭脳」を車両側から遠隔側に移し、車両の汎用品化と低コスト化を推し進める遠隔自動運転。その中核技術になり得る。

 NTTは2018年、ビルに囲まれて測位誤差が大きくなる東京都・首都高速道路における竹橋ジャンクション付近で車両を走らせて、実験した。遠隔側の計算機で補正した結果を移動通信経由で車両に送り、測位誤差を10cm程度にできた。測位回数は1秒間に数十回と、十分に多いとする。

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NTTは、カーナビ用の安価なGNSS受信機を使って、誤差10cm程度の高精度な自車位置推定を実現する技術を開発している。ビルに囲まれた首都高速道路の竹橋ジャンクション付近で、実験した。(a)が開発した技術を使う場合の測位結果で、(b)が使わない場合。(b)は誤差が大き過ぎて、途中で測位できない場所がある。(出所:NTT)

 GNSS 信号を補正するアルゴリズムは、GNSS衛星が発する電波のうち、伝搬遅延のほとんどない直接波を受信できる「可視衛星」を選んで活用するもの。反射波や回折波を受信する「不可視衛星」は、伝搬遅延が大きくなりやすいためになるべく使わない。

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NTTの高精度測位技術では、伝搬遅延のほとんどない直接波を受信できる「可視衛星」を重視して選ぶことが重要になる。測位誤差の大きな要因が、伝搬遅延の大きな反射波や回折波を測位計算に用いることにあるからだ。(出所:NTT)

 測位計算には、少なくとも4機の衛星が必要になる。ビルに囲まれて可視衛星だけで4機を選べる状況でなければ、伝搬遅延がなるべく小さな不可視衛星を選ぶ。

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