グーグルカーを筆頭に、自動運転車の主流は自律型だ。クルマ単体で、基本機能の全てを完結する一方で、コストは数千万円と極めて高くなる。スマートフォンでは、多くの機能をクラウドに移して端末の負荷を軽くし、手頃な価格で多くのサービスを実現した。クルマも同じ。次世代移動通信「5G」とエッジコンピューティングの導入で、クルマの“頭脳”は遠隔側に移っていく。自動車産業の主役は再び変わる。ソニーやパナソニックといった新参者が虎視眈々と動き始めた。

 「スマートフォンに車輪をつける」――。

 クルマの門外漢に近いソニーが、自動運転車の開発に挑む。「iPhone」の登場で実現した生活の革新が再び始まると見越すからだ。ソニーにとって自動運転車は、ディスプレーとスピーカーを備えた“走るスマホ”に映る。クルマは映像コンテンツの配信先の1つになる。

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(左)ソニーの遠隔運転できる自動運転車。車両のベースは、ヤマハ発動機の自動運転ゴルフカート。(右)車両に搭載した4個のソニー製4Kカメラで周囲を撮影している様子。(写真:ソニー)

 事業モデルはスマホと同じ。無料と有料を組み合わせた「フリーミアム」を持ち込む構想を描く。“移動”は無料で、有料になるのは車内で過ごす“体験”だ。

 「移動フリー」の布石になり得るのが、“スマホカー”の実験で試す遠隔運転である。自動運転の“頭脳”が、端末側から遠隔側に移る契機になる。端末側の車両の装備を省いて、価格破壊を引き起こせる可能性がある。遠隔側の「クラウド」で大半の機能を実現するスマホと似たイメージだ。

 ソニーは2018年、第4世代移動通信「LTE」を使って、東京都にいる人が、沖縄県の車両を遠隔で運転する実験に成功した。2019年夏以降にはNTTドコモと、第5世代移動通信(5G)を使って日本とグアムの間で遠隔運転する実験を始める。

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ソニーの自動運転車は、遠隔で運転できる。東京で操作し、沖縄で走らせた。(写真:ソニー)

 いずれ、「遠隔の人ではなくAI(人工知能)が運転するかもしれない」(ソニーAIロボティクスグループ商品企画部担当部長の江里口真朗氏)。

 「究極は水道哲学」――。

 パナソニックで自動運転車の開発を率いる臼井直記氏が見据える先は、ソニーと似ている。現時点で3000万円前後と高額になるとされる自動運転車。松下幸之助氏の「水道哲学」を究極の目標と考えて、低価格で良質なものを大量に供給することを目指す。

 自動車で「水道哲学」を推し進めるように要望したのが、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏である。パナソニックの100周年記念講演で、30万円の「ライフカー」を実現するように激励した。

 パナソニックが2018年に提案した自動運転車「SPACe_C(スペースシー)」は、ライフカーへの一里塚になる。

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パナソニックの自動運転車。外観はソニーの車両とよく似ている。大きく異なるのは、下側のプラットフォームとアッパーボディーを分けた点。顧客の需要に合わせてボディーを“着せ替え”できる。(写真:パナソニック)

 開発者である臼井氏の一案が、高価なセンサー機能を遠隔側に移すこと。例えば現状で数十~数百万円する3次元赤外線レーザースキャナー(LIDAR)を省く。遠隔側の計算機にLIDARのデータを集めて、街中を走るクルマの間で共有することで、「1台にLIDARがあれば、他の車両にはいらなくなる」(臼井氏)。

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