平成前夜の1988年にデビューした経路探索ソフトの「駅すぱあと」。路線図や時刻表と首っ引きで調べなければ分からなかった最適な交通機関の選択を自動化した先駆者だ。今でこそ事業の柱となった同ソフトの滑り出しは絶不調。開発元のヴァル研究所にとって一発勝負に近い賭けだった。

ヴァル研究所の経路探索ソフト「駅すぱあと首都圏版」
1988年発売。価格は2万7000円(税別)。画面は1989年時のもの。
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 駅すぱあとは、ヴァル研究所の主力事業が受託開発や技術者派遣だった中、それらに代わる柱として製品化に至った新規事業だ。ヴァル研究所は、1984年にBASICで業務ソフトを開発できるツール「ぱぴるす」、1986年にその後継の「ファラオ」を発売する。駅すぱあとはこれらと並ぶ新規事業として生まれた。

 原型となったのは、駅すぱあとの開発から先立つこと2年、1986年に東京・渋谷駅にキオスク端末として設置された「首都圏電車網最短経路案内システム」だ。首都圏電車網最短経路案内システムは、旧運輸省が進めていた交通機関の情報化プロジェクト「メディア・ターミナル構想」の下で生まれた。同プロジェクトの参加者とヴァル研究所の創業者の島村隆雄元社長が知己だった縁で受託したものだ。

 渋谷駅に設置したキオスク端末は、首都圏の交通機関に慣れないユーザーから好評を得た。首都圏電車網最短経路案内システムの開発に携わったヴァル研究所顧問の宮本雅臣氏は「2点間の経路探索アルゴリズム自体は、1986年の時点で完成していた。しかしNECのPC-9801シリーズで実用に堪える速度を出すのが困難だった」と当時を振り返る。

 メインフレームの端末で応答を待つ相場「3~5秒で反応が返る速度を目安に開発した」(同氏)。基本的な処理は、2点間の経路探索と、駅での平均待ち時間、駅間の移動にかかる時間、乗り換え時間の合計で算出する移動時間、そして運賃計算だ。いずれもオンメモリーで動作する。

 ソフト名は社員から公募した。公募した中に「駅スパート」という名称が2件あり、ひらがなにした上で製品名に決まった。

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