研究開発で新体制を構築したソニー。技術の出口をエレキからエンターテインメント(エンタメ)へ広げるとともに、5年先や10年先に向けた仕込みに力を入れる。中・長期の仕込みで特に重視しているのがオープンイノベーションだ。会社の枠を超え、国境を越えて、外の大学や研究機関、企業と組み、多様な人材を巻き込む。同社のR&Dセンターのトップを務める勝本徹氏に、オープンイノベーション戦略について聞いた。(聞き手は、内山育海、田中直樹)

2018年4月に、R&Dのトップに着任した時、社長から頼まれたことが3つあると仰った。これまで、「技術を会社・グループ全体にもっと活用すること」「5年先、10年先のための仕込みのウエイトをどんどん増やすこと」の2つについて聞いた(関連記事1、2)。今回は、「オープンイノベーション」について聞きたい。

関連記事1:エンタメとエレキの融合でここまでできる、ソニーのR&D新戦略
関連記事2:宇多田ヒカルのVR映像、クリエーターとの共同開発がソニーの強み

勝本氏 昨年(2018年)R&Dセンター長に就任してから、まず日本の部門長、副部門長クラスのマネジメントとスタッフの間で膝詰めのオフサイトミーティングを行った。夕食も共にし、ざっくばらんに議論した。その年の6月からは海外のラボのヘッドも入れて、ミーティングを4~5回行った。それぞれのラボへ行き、「これからどうしようか」という議論を繰り返した。夜はみんなでディナーを取り、交流を密にしてきた。海外ラボに関する情報についても、すぐに社内で共有できるように、即日で内容を英語にして流すようにスタッフには無理を言っている。

ソニー 執行役 常務 R&Dセンター長の勝本徹氏
(写真:加藤 康)
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 即日は難しいが、同じ週の週末までには情報が英語になり、海外のラボとも情報をシェアできるようになった。マネジメントの月次報告書は全て英語にしている。国内・海外を問わず各拠点のマネジメントには同じように、英語で提出してもらっている。その結果、米国、中国、欧州を含め、どこの拠点で何をしてるかが、ほぼ時間差なく情報共有できるようになった。

 例えば、米国西海岸のサンノゼに拠点がある。近くには、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・インタラクティブエンタテインメントなどの、エンタメ関連の会社がある。今まではデジタルカメラやビデオカメラなどの映像技術を開発している拠点だったが、地の利を生かしてもっとエンターテインメントに活用する技術に力を入れようという形に、話がまとまってきている。

他には、どのような例があるか。

勝本氏 欧州の例を挙げよう。ベルギーのブリュッセルには長年R&D拠点がある。かつてはテレビのソフトウエアを開発したり、パソコン「VAIO」のアプリを開発したりしていた。そうした背景から、セキュリティーやデータを扱うのが得意だった。そこで、「ブリュッセルでは、ソニー中のデータに関係する業務を集中的にやろう」という方針が見えてきている。

 また、グループ内にソニーモバイルコミュニケーションズがあり、拠点の1つであるスウェーデンのルンドには、通信関連の技術者が多い。しかし、通信に関する開発をしている技術者は、ソニー社内に結構いる。共通の開発テーマを持つ技術者の存在が見えてくると、「皆で一緒にやろう」という話になる。1年くらいかけて、海外拠点とも話をして、情報がまとまりシェアされるようになると、組織を超えた横連携の動きは加速度的に進む。

 海外拠点については、現在は、拠点ごとに強みを持つ分野にフォーカスしてもらうとともに、拠点に近い大学と積極的にコラボレーションしてもらうようにしている。そのような活動をしてもらうことで、海外の大学と日本にいる技術者がつながりやすくなる。そういう意味で、オープンコラボレーションのハブになってもらっている事例がたくさんある。

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