財務基盤の強化が奏功し、好調な業績が続くソニー。同社の復活は本物か。その鍵を握る研究開発の組織を同社は一新させた。2018年7月に始動した「R&Dセンター」は、培ってきた技術で、テレビやカメラ、半導体といった一部の事業だけではなく、ソニーグループ全体に貢献することを目指す。映画や音楽、ゲーム、金融など多彩な事業にソニー発の技術を活用するために、研究開発の進め方を根底から変えようと動き出した。前回に続き、R&Dセンターのトップを務める勝本徹氏に聞いた。(聞き手は、内山育海、田中直樹)

シンガーソングライターの宇多田ヒカルさんのVR(仮想現実)映像配信コンテンツの制作に、研究開発チームのメンバーが参加したと聞いた。

宇多田ヒカルさんのVR映像の撮影風景
(c)2018 U3MUSIC/Sony Music Entertainment (Japan) Inc. (c)2018 Sony Interactive Entertainment Inc.
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勝本氏 「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 - “光”&“誓い” - VR」というタイトルで、2019年1月18日に一般配信を開始したものだ。宇多田ヒカルさんのライブツアーの中から「光」と「誓い」の2曲を収録した。ゲームや映画などのVR映像を楽しめる「PS VR」で見ることができる。

 音楽関連のソニー・ミュージックエンタテインメントのチームと、PS VRを手掛けるソニー・インタラクティブエンタテインメントのチーム、プロフェッショナル向け(業務用)映像機器のチーム、そして研究開発(R&D)のチームのメンバーから成るグループ横断プロジェクトを編成し、そこが取り組んだ。ソニーグループの中に、ソニー・ミュージックがあること、そして社内に映画の撮影機器の部門を持ち、VR関連の取り組みもしてきたことが、こうした横断プロジェクトを組めた背景にはある。

 宇多田ヒカルさんがステージで歌っている姿を、映画用のカメラを複数台使ってVR撮影したのだ。3つのアングルを切り替えて色々な映像が見られる。例えばズームアップすると、あたかも目の前で歌ってくれているように見える。ここに本当に彼女がいるように感じるのだ。彼女はモニター用のイヤホンをしているのだが、ものすごくきれいなイヤホンを付けているところまでしっかりと見える。臨場感があって結構ドキドキする。

(c)2018 U3MUSIC/Sony Music Entertainment (Japan) Inc. (c)2018 Sony Interactive Entertainment Inc.
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 ソニー・ミュージックとソニー・インタラクティブエンタテインメント、業務用映像機器、研究開発の人間が一緒になり、誰かを撮影にいくことは前例がないと思う。今ではさまざまなアーティストを、かなり頻繁に撮りに行っている。こうした取り組みで実現したものを、市場に届けられるところまで来たと思っている。

 このように技術者とクリエーターが共同で作業できるのが、ソニーの強みだ。今回のVRや前回紹介した3Dスキャニングといった新技術は、コンテンツクリエーターにとって、新しい表現の可能性を広げるものだ。技術者は、技術の立場から可能性を示すことができる。最後はコンテンツクリエーターの創造性で作品の幅が決まる。

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