屋根断熱の結露トラブルを招く原因の代表例が、意匠優先の設計や雑な断熱施工。具体的な事例を紹介する

事例2  施工時の初期含水に疑い

 軒ゼロ、デザインされた方形の寄棟屋根、換気設備なし―。そんな意匠優先の設計があだとなり、屋根内部に結露が発生した。近畿地方の住宅街に建つ木造2階建て住宅で起こった屋根断熱のトラブルだ。

 発端は先に示した例と同様、2階の居室天井にできた染みだ。完成から約1年が経過した梅雨の頃、居住者が染みに気づき、施工した工務店に相談。工務店はハウゼコ(大阪市)とともに対応に当たった。

 2社が屋根内部を調べると、屋根の頭頂部や隅棟を中心に野地板がぬれており、野地板を留めるくぎも腐食していた〔写真12〕。雨漏りか結露のどちらかが原因と推定されたが、2社は(1)ルーフィング上には漏水の痕跡がないこと(2)ルーフィング下に水が確認されたことの2点に注目。雨漏りではなく結露だと判断した。

〔写真1〕完成したばかりなのに結露
築1年の寄棟屋根の戸建て住宅に発生した結露トラブル。天井の染みで発覚した。屋根材をめくるとルーフィングの上には漏水の痕跡がなかった。一方、ルーフィングの下には結露水があった。特に頭頂部や、北西面の状態が悪い〔上の写真〕。南面は北西面に比べてましであるものの、下の写真のように、隅棟に沿って結露していた(写真:ハウゼコ)
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〔写真2〕屋根材の固定も危うくなる
結露水は木材の腐朽だけでなく、金属の腐食も進行させる。野地板を留めていたくぎもさびがかなり進行していた(写真:ハウゼコ)
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 結露水の出所について、ハウゼコの神戸睦史社長は、その量の多さに着目してこう説く。「梅雨時の施工で初期含水が多かった可能性が高い」

屋根換気を考慮せずに設計

 この住宅の問題点は、現場発泡ウレタンによる屋根断熱を施していたのに、設計者が屋根通気の知識に欠けていた点にある。断熱材と野地板の間に通気層はあったものの、排気口となる棟換気や野地面換気、給気口となる軒先換気や通気見切りなどはなかった。これでは通気層の空気を動かし、湿気を排出できない。

 その結果、躯体の木材などから蒸発してきた湿気は棟でせき止められて野地板の下に滞留。その後、湿気は野地板の継ぎ目などの隙間からルーフィングの下に入り込み、放射冷却などの影響で冷やされた野地板の表面で結露したと考えられる。そこで2社は、隅棟部の野地板を一部、切り欠き、隅棟換気用の装置を設置。結露の解消を図った〔写真3〕。

〔写真3〕隅棟に換気口
棟換気や軒先の給気口など、通気対策がほとんど実施されていなかったので、結露対策として隅棟で換気を行う装置を設置。改善を図った(写真:ハウゼコ)
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 神戸社長は、このようなトラブルの背景には、垢抜けた外観や勾配天井といった意匠を重視する建て主の増加があるとみる。

 例えば、個性的なデザインを得意とする設計事務所が受注した住宅の施工者を入札で選ぶような場合、両者の力関係で施工者は設計事務所に物を言いにくくなる。設計に不備があっても、施工者が強く指摘できないまま、設計図通りに施工してしまうこともあるようだ。

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