今回は、部下が育たないという杉浦リーダー(仮名)からの相談です。

 私は、部下の育成に関して信念を持っています。部下たちにうるさく言わなくても、上司の背中を見て経験を積んでいけば着実に成長していく、というものです。そのため、これまでほとんど指導らしい指導を行ってきませんでした。ところが、ここ数年、私のチームに配属された部下たちは全くと言ってよいほど育ってくれていません。

 「背中を見て覚えてくれ!」という私のやり方は間違っているのでしょうか。私はどうやって部下を育てていけばよいのでしょうか。

 意識的かつ計画的に指導していくことで、早期に戦力化することが求められています。そのために有効な手法の1つがOJTです。既によく知られた手法ですが、「うまく使いこなせていない」という人は意外に多いのではないでしょうか。そこで、改めてOJTについて振り返ってみましょう。

 OJTとは、On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略で、仕事に必要な知識やスキルを職場で実務を通して学ぶことです。

 OJTを進めるためには、3つの原則を守る必要があります。

  • [1]業務の目的を明確にして意図的に進める
  • [2]ゴールを具体化して計画に基づいて行う
  • [3]1回限りではなく継続的に繰り返し実施する

 OJTの質を保つためにも、これら3つの原則を満たすことが大切です。OJTには多くのメリットがあります。

①個別的にきめ細かく指導ができる
部下1人ひとりの教育ニーズに即した指導を実施できます。

②実務的・実践的指導ができる
OJT指導係が職場のリーダーなので、仕事のプロセスと一体化した指導ができます。実際の仕事そのものが教材であり、その成果は実績と直結しています。

③経済的である
教育機関に派遣したり、外部講師を招いて集合教育をしたりする特別な出費は不要です。

④職場が活性化する
部下に直接働き掛けることにより、コミュニケーションが活発化します。職場の意識高揚が図れるため、互いの信頼関係を高めることができます。

 一方で課題もあります。指導側の立場からすると、次のような課題を挙げられます。

[1]教育に対する意識が低い

 OJT指導係が持つ人材教育に対する意識が低い場合があります。「たまたま任されただけ」「会社から特別に評価されるわけでもないし」といった考えが指導係にあれば、高いマインドをなかなか持つことができません。「将来、企業を背負って立つ人材を教育している」という意識を持って新人の教育に臨めているか、ということです。OJT指導係は、自身の業務と並行して教育を実施しながら、担当する新人を指導する間も、絶えず効果を検証して改善していく必要があります。

[2]教育する時間がない

 OJT指導係は大抵、自身の業務をこなしながら教育を実施しなければなりません。これは想像以上に負担が大きいものです。どうしても自身の業務に集中せざるをえず、教育する時間が取れなくなります。その結果、OJT自体が形骸化してしまい、新人が教育されることなく放置されてしまう、というケースが多くなってしまいます。人事担当者や管理者は、OJT計画の立案や検討に積極的に関わり、指導係の負担を軽減して、業務に影響が出ないようにサポートしていくことが大切です。

[3]教育する技術や習慣がない

 OJT指導係は専門講師ではないため、教育の手法や水準にばらつきがあり、結果的に、新入社員の成長にもばらつきが出てきます。指導の質を安定させるためには、教育係への「教え方」の指導を行う必要があります。OJT指導者の多くは、自身の指導手法に不安を抱えながら教育しています。これではOJTが担う本来の役割を果たすことができません。

 OJTの目的は、新入の戦力化だけでなく、指導係自身のスキルアップでもあります。この経験は、中堅層のマネジメント意識の醸成のために欠かせないプロセスであり、OJTの経験を通してビジネスパーソンとしてのスキルアップを促します。

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