2018年10月26日、福島県の建設業界に激震が走った。戸田建設が地場大手の佐藤工業(福島市)を完全子会社化すると発表したからだ。

 「よもや佐藤工業が」。県内の建設業関係者が驚くのも無理はない。同社の18年度の売上高は約110億円で、県内有数の規模を誇る。それだけではない。創業者が福島市長、その兄が福島県知事を務めた超名門なのだ(写真12図1)。

写真1■ 福島市泉にある佐藤工業の本社ビル。創業家の自宅と隣り合って立つ。同社は東北中央自道車道の工事や福島県新地町の海岸堤防復旧工事などを手掛ける(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]
写真2■ 佐藤工業の本社玄関にある創業者の胸像(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]
時期 主な出来事
1948年 佐藤達也氏が佐藤工業を創業(翌年に福島県知事から建設業許可を取得)
1957年 佐藤達也氏の兄で政治家の善一郎氏が福島県知事に就任
1969年 県内の建設会社として初めて手掛けた重力式コンクリートダム「藤倉ダム」が竣工
1971年 佐藤達也氏が福島市長に就任
1977年 サウジアラビアのジッダで初の海外工事
1991年 新社屋が完成
2000年 佐藤勝三社長(2代目)が全国建設業協同組合連合会の会長に就任
2006年 県発注の下水道工事を巡る談合事件で佐藤勝三氏が逮捕(裁判で有罪が確定)
2013年 現社長(3代目)の佐藤勝也氏が社長に就任
2019年 戸田建設の完全子会社に。佐藤勝也社長は3月末で退任予定
図1 ■ 地元の「超名門」として君臨してきた佐藤工業と佐藤家の歴史
(資料:佐藤工業のウェブサイトや取材を基に日経コンストラクションが作成)

 会社の売却を決めたのは創業家3代目の佐藤勝也社長(48歳)。2代目で父の勝三氏が06年、福島県発注の下水道整備工事を巡る談合事件で逮捕・起訴された後、経営の立て直しに奔走し、13年に社長に就任した。

 なぜ勝也社長は戸田建設に会社を委ねたのか。きっかけは17年7月にM&A(合併・買収)仲介大手のM&Aキャピタルパートナーズから届いた手紙だ。「御社を買い取りたい会社が複数ある」などと書かれていた。そのうちの1社が、戸田建設だった。

 もともと創業家による世襲に否定的だった勝也社長(図2)。東日本大震災の復興需要がピークアウトするなか、県内の建設市場の縮小を見据えて戸田建設との面談を決意。1年超の手続きを経て18年10月26日に株式譲渡契約を結んだ。

図2■ 佐藤工業の株式譲渡に関する発表文。創業家の世襲をやめることが自分の使命だとつづった(黄色で強調した部分)(資料:佐藤工業)
[画像のクリックで拡大表示]

 勝也社長は言う。「現在20代の社員が創業100周年を迎える30年後も働き続けられるようにするには、戸田建設の安定した経営の下で会社を存続させる必要があった」。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら