顧客から信頼される、しっかりしたSEになる。マネジャーになったら部下を支え、育てる。その心得を示した書籍『SEを極める50の鉄則』(馬場史郎著、日経BP刊)が19年ぶりに復刊した。この特集では、著作のベースとなった連載時代から愛読していたベテランに「SE道」を聞いた。

 「SEとして顧客が51で会社が49、つまりぎりぎりまでお客様と会社のことを考えて行動したのかどうか、年2回の人事考課で確認しています。例えば上長から『会社の行事に出なかったがお客様に調整してもらうように頼んだのか』といったように質問します」

 システム開発会社、アイ アンド エル ソフトウェアの𠮷岡朗社長はこう説明する。中途採用をした際、「お客様から言われたことだけをやれ、と指導されました」と話すSEが入ってくることもある。そういうSEに対し「それでは顧客が100、会社が0になってしまう。会社のことも考えて行動してほしい」と指導するという。

 プロジェクトリーダー以上の中堅社員に対しては「事業目標の達成と部下の育成」の両立を求める。人事考課の際には「納期通りにカットオーバーできたことは評価する。ただし部下の面倒をあまり見なかったのではないか」などと問いただす。

 このように同社は顧客や部下、協力会社の社員とのコミュニケーションの力を社員に期待している。社内研修では顧客とやり取りをするためのガイドとして「SEの非常識リスト」を渡し、「間違った行動をしていないか」と考えさせる。

 非常識リストには「顧客が言う通りに仕事をする」「『ITに強いSEが優秀なSE』と考えている」「自分の受注した範囲は考えるが顧客の担当範囲まで考えない」「相手のIT理解度に関係なくIT用語を使って話す」など20件の非常識が列挙されている。

「SEの常識は世間の非常識」に

 「顧客が51、会社が49」「事業目標の達成と部下の育成」「SEの非常識リスト」、いずれも書籍『SEを極める50の鉄則』から引用したものだ。

 著者の馬場史郎氏が日経コンピュータ誌にSEやSEマネジャーに関するコラムを書き始めて以来、𠮷岡氏はそれらを読み続けた。「SEの常識は世間一般から見て非常識な面が多い、という指摘はいたく響きました」。

 連載をまとめた書籍が出版されて以降、同社に入ってくる社員には必ず渡し、読んでもらってきた。100名近い同社のSEやプログラマーは同書を読んでいるはずだが一回読んだだけで実践できるわけではない。研修で言及し、人事考課の項目に取り入れ、全社の仕組みにすることを目指してきた。

 全員に読ませ続ける理由を𠮷岡社長は次のように語る。

 「技術を使い、チームを組んでお客様のためにプロジェクトを進める。そうした仕事をする際の骨格になる基本が書いてある。プロジェクトに関わるすべての人に役立つのではないでしょうか」

 もちろんシステム開発会社である以上、社員には技術力が求められる。「C言語の仕事はもうほとんどありませんが、あえてC言語を今でも教えています。コンピューターの振る舞いを分かってほしいから。アセンブラーを教えたいくらいですが良い教育キットが見当たりませんでした」。

時代に合わせて読み替える

 C言語の仕事が減ったように、『SEを極める50の鉄則』の初版が世に出た2000年以降、ITの世界は大きく変わった。新しい技術が登場、ITの適用領域は広がった。事務を処理する従来の仕事に加え、インターネットビジネス、IoT(モノのインターネット)、ロボットやAI(人工知能)の利用、といった仕事があらゆる産業界で求められる。

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