本記事は、日経コンピュータ2015年3月5日号の特集「さらば訴訟リスク」を再構成したものです。

訴訟リスクを回避するためには、情報共有の仕組みを作る一方でシステム開発に関わる法律面を押さえておきたい。専門家が指摘する三つの注意点を紹介する。

注意点1:民法改正の影響に要注意

 約120年ぶりとなる大幅な改正を控える民法。2015年3月下旬に改正法案が国会に提出される予定だ。改正点は約200項目におよび、システム開発の請負契約や準委任契約に影響が出るので、注意が必要になる。

解約時の報酬請求権を追加

 請負・準委任に関する主な変更点は六つ。まず「請負契約が中途解約された場合などの報酬請求権」が追加される。請負契約で仕事が完成できなくなった、あるいは仕事の完成前に契約が解除された場合に、仕事の結果が可分で、かつその仕事によって注文者が利益を受けるときは、請負人は注文者が受ける利益の限度で報酬を請求できる、というものだ。

 この報酬請求権は、請負人に過失がある場合にも適用される。ベンダーにとっては従来よりも有利に働きそうだ。

 二つめは「請負契約の目的物が契約に適合しない場合の解除」。現行法では請負契約の目的物が契約に適合しない場合、つまり目的物に瑕疵がある場合の解除は、当該瑕疵により契約の目的を達成できないときに限られる。改正案では、注文者が相当の期間内に修補するよう請求したにもかかわらず、請負人が修補しない場合でも注文者は契約を解除できる。これはユーザー企業にとって朗報だ。

 三つめは「請負契約の目的物が契約に適合しない場合の修補請求等の期限」である。現行法では、請負契約の目的物が契約に適合しない場合(目的物に瑕疵がある場合)の注文者による修補請求や損害賠償請求、契約解除の期限は、目的物の引き渡しから1年とされていた。改正案では、注文者が不適合の事実を知ったときから1年となった。

 注文者が修補請求をできる期間が事実上延びることになり、かつその期間は注文者の主観に左右されるので、ベンダーに大きな影響を与えそうだ。

 四つめは「注文者が破産した場合の請負人による解除」。現行法上では、注文者が破産した場合、請負人は仕事の完成後であっても契約を解除できる。つまり、請負人は完成した目的物を他者に転売して代金を回収することができた。

 改正案では、請負人が解除できるのは仕事の完成までの間に限定される。このため、ベンダーは完成したシステムを他者に転売して代金の回収を図ることができなくなる。

準委任契約を二つにパターン分け

 五つめは「準委任契約の報酬の支払時期」。現行法では、準委任契約における報酬の支払い時期は委任事務を履行した後としている。改正案では、契約を履行割合型(事務処理の労務に対して報酬が支払われる)と成果完成型(事務処理の結果として達成された成果に対して報酬が支払われる)に分け、前者は現行法と同様、後者は成果の引き渡し時(引き渡しを要しない場合は、完成時)とする。

 最後は「準委任契約が中途解約された場合等の報酬請求権」。準委任契約でも「請負契約が中途解約された場合などの報酬請求権」と同様の規律が適用される。

 改正案では、履行割合型の委任において、委任事務を処理できなくなったとき、または委任が履行の中途で終了したときは、受任者は既に履行した割合に応じて報酬を請求できる。また、成果完成型の委任で成果を得られなくなったとき、または成果を得る前に委任が終了したときは、事務の結果が可分であり、かつ、それによって委任者が利益を受けるとき、受任者は委任者が受ける利益の限度で報酬を請求できる。

 請負契約の場合と同様、上記は受任者に過失がある場合にも適用され、委任者が利益を受ける部分に関して、受任者が支出した費用についても請求できる。

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