アルミ建材大手の文化シヤッターが約27億4000万円の損害賠償を求めて2017年11月に日本IBMを訴えた裁判は、現在も東京地方裁判所で継続中だ。訴えられた側の日本IBMは2018年3月、追加作業の未払い金など12億1000万円の支払いを求めて反訴した。

 文化シヤッターは新規に開発していた販売管理システムの開発継続を断念し、2017年度第2四半期決算(2017年7月~10月)で17億4500万円の特別損失を計上した。開発委託先の日本IBMが業務必須機能の理解を怠ったために開発が頓挫したなどとして、支払った費用などの返還を求めている。

 一方の日本IBMは、文化シヤッターの経営陣とユーザー部門が意思統一を怠ったままプロジェクトを進めたことが頓挫の原因と主張。全面的に争う姿勢を見せた。

 なぜプロジェクトは失敗に終わったのか。訴状や準備書面から経緯をひもとく。

業務革新に合わせ、20年以上稼働のシステムを刷新

 文化シヤッターが既存の販売管理システムを刷新するプロジェクトを本格的に始動させたのは2015年3月のことだ。

 同社の基幹業務システムは開発から20年以上が経過。ホストコンピューターの保守性やソフトウエア開発の柔軟性、拡張性に難があった。

 そこで文化シヤッターは、基幹システムのうち販売管理の機能を刷新する計画を立ち上げた。販売部門の業務革新とシステムの刷新をセットで実施する。タブレット経由で社外からも販売データを参照できるようにするほか、販売管理システムに蓄積したデータを分析して営業の効率を高めるとの構想を描いた。

 文化シヤッターは2014年10月~12月に簡易な要件定義を実施したうえで、日本IBMに提案依頼書(RFP)の作成を委託。そのRFPに基づき複数のITベンダーから提案を受けたうえで、日本IBMをシステム構築の委託先として選定した。

 日本IBMの提案は、販売管理システムの構築にERP(統合基幹業務システム)などのパッケージを使わず、米セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)のクラウド開発基盤「Salesforce1 Platform」を利用してシステムを「手作り」する内容だった。稼働時期は約1年半後の2016年7月、総開発費用は約12億3500万円を見込んでいた。

 日本IBMは提案書の中で「開発の8割はマウス操作で部品を組み合わせて実現できる。プログラミングは2割で済む」「HTML拡張言語とJava拡張言語で固有の要件にも対応できる」などと開発生産性の高さをうたっていた。ここでの拡張言語とは、Salesforce独自のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)型開発環境である「Visualforce」と「Apex」を指す。

 両社は当初、アジャイル開発とウオーターフォール開発の併用によるシステム構築を目指していたが、途中からウオーターフォール開発のみに方針を転換。要件定義、設計・開発、システムテストと工程を進めた。

 プロジェクトは当初予定より数カ月遅れ、両社は稼働時期を2016年7月から11月に延期。新たな日程を前提に、同年8月にユーザー受け入れテストを始めた。ここで問題が噴出した。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら