2019年3月15日に掲載した「動かないコンピュータ」記事の再編集版です。

 「問題点を指摘したにもかかわらず、(インテックは)適切な措置を講じることなく、システムの完成が不可能になった」。三菱食品は2018年11月、システム開発の失敗を巡り委託先のインテックを東京地方裁判所に提訴した。

 三菱食品は訴状で冒頭のように述べ、ITの専門的な知識と経験を持つインテックに重大な過失があると主張した。損害賠償請求額は127億円と、勘定系システムの開発失敗を巡るスルガ銀行と日本IBMの裁判の当初請求額を上回る。

 裁判の争点は、インテックにシステムの完成義務があったか、プロジェクトマネジメント義務に違反する事実があったか、などになりそうだ。三菱食品が東京地裁に提出した訴状とインテックの答弁書を基に一連の経緯を追う。

 事の発端は2014年1月まで遡る。三菱食品は3000社の取引先とつながる「企業間EDI(電子データ交換)システム」の刷新プロジェクトを企画。RFP(提案依頼書)を複数のベンダーに出した。三菱食品は当時、基幹系システムを2016年度に刷新する計画を進めており、サブシステムである企業間EDIシステムの刷新も決めた。

 同システムは取引先ごとに定めた条件に従って、発注書や納品書、請求書などのデータを作成・受領する役割を担う。取引先ごとに接続プログラムを開発する必要があり、取引先の追加や条件変更に時間とコストがかかっていた。保守性の低下も課題であり、刷新でこれらの課題の解消を狙った。

 RFPでは業務ルールをプログラムから切り出して管理・実行するビジネスルール管理システム(BRMS)の採用を推奨した。取引先ごとの接続機能の開発作業を、従来のプログラミングから、より簡易に記述できるルールの設定に変更できると考えた。

 三菱食品は各社の提案を検討し、委託先にインテックを選んだ。RFPに沿う提案だった点や、「類似の事案で複数の実績を持つとインテックが説明した」(訴状より、以下同)点が決め手となった。同社が2014年1月から旧基幹系システムの保守業務を請け負っていた点も考慮した。

初回稼働が3カ月遅れる

 三菱食品とインテックは2014年5月に、EDI処理用のデータベースと基本的な処理機能をまとめた「基本機能」の開発と取引先3000社のルール設定を進めるプロジェクトの基本契約を結び、6月にキックオフ会議を開いた。RFP上、初回の稼働は2015年4月とし、その後1年間で3000社のルールを設定するとしていた。

 三菱食品はRFPでBRMSに米レッドハットの「JBoss BRMS」を推奨した。そのうえでより良い構築手法があれば提案するよう求めた。インテックはこれに基づき、JBoss BRMSの利用を提案。概要設計工程で主要取引先を含む100社のルール設計を先行し、ルールの8割をカバーする共通部品を設計するとの計画を示していた。

 だが初回稼働は7月と3カ月遅れた。初回稼働で取引先70社を設定する計画だったが、実際には1社しか設定できなかった。インテックがBRMSを使いこなせず、遅れが生じたようだ。

 3000社のルール設定も遅れていった。当初の計画からすると、単純計算で毎月250社程度のルールを設定する必要がある。だがインテックの遅れは大きくなり、1年間で3000社のルール設定は実現不可能になった。三菱食品はインテックに対してプロジェクトの問題点を指摘して改善を求めた。

 例えばインテックが設計からテストまでの工程ごとに担当者を分けていた分業制が品質悪化や手戻り発生の原因とみて、取引先1社の全作業を1人が受け持つようインテックに提案した。3000社のルールを共通化し切れずに似たようなルールが多数できている状況に対して、「ルールを適切に管理しなければ類似のルールが散在してしまう」とも指摘した。

体制変更の直後に委託取りやめ

 「目先のことだけに集中し、先を見ていない。全体を通したマネジメントが全くできていない」。2016年に入っても取引先のルール設定作業の遅れは取り戻せず、三菱食品の指摘は厳しさを増していった。「遅延が続いているなかでも何も変わっていないように見える。課題は出てきても施策が出てこない。あるいは結果が伴っていない」。

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