量子コンピューターが既存方式のコンピューターでは到達し得ない能力を持つことを示す「量子超越性」を米グーグル(Google)が実証したもようだ。このニュースはユーザー企業による量子コンピューターへの投資を加速させるだろう。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)がグーグルによる量子超越性の実証を報じたのは2019年9月20日のこと。米航空宇宙局(NASA)のWebサイトに論文が一時的に誤って掲載されたため、明らかになったとする。正式な発表は間もなくのようだ。

 グーグルによる量子超越性の実証とはどのようなものか。グーグルの量子コンピューター開発を指揮する、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マティニス(John Martinis)教授は2017年12月に開催された「Q2B Conference」で計画を説明していた。その概要をまとめてみよう。

「スパコンで動作の再現は不可能」を実証

 まずグーグルは自社開発した量子コンピューターを使って「乱数を生成する量子回路」を実装し、実際に乱数(ビット列)を生み出す。それに並行して既存方式のコンピューターでも同様の構成の量子回路をシミュレーションし、同じように乱数を生成してみる。

 量子ビットの数が少ないと、量子コンピューターが生成した乱数の確率分布は、既存のコンピューターによるシミュレーションでも再現が可能だ。しかし量子ビットの数が増えていくと、既存のコンピューターでは再現できなくなる。マティニス教授はその境界線が「50量子ビット」にあるとしていた。

 FTの報道によればグーグルは量子ビットを53個搭載する量子コンピューター「Sycamore」と世界最速のスーパーコンピューターである「Summit」の両方を動かし、世界最速のスパコンをしても量子コンピューターの動作をシミュレーションできなくなることを示したという。グーグルの量子コンピューターが3分20秒(200秒)を要して出力した結果を、Summitによるシミュレーションによって得るためには1万年もの時間がかかる。

 当初の計画では2018年に入ってすぐにも、この量子超越性が実証できる見込みだった。計画から1年以上遅れての達成ということになりそうだ。

 グーグルの量子人工知能研究所を率いるハルトムト・ネーヴェン(Hartmut Neven)氏は2018年6月に、日経 xTECHの取材に対して「量子ゲートのキャリブレーション(測定値のズレを修正する作業)を自動化するソフトウエアの改善に時間がかかっている」と説明していた。また72量子ビットを搭載する量子プロセッサー「Bristlecone」による実験が難航したため、53量子ビットを搭載する新しいSycamoreに切り替えたことも、時間を要した理由の1つだろう。

 量子超越性の実証が重要なのは、「万能量子コンピューター(ユニバーサル量子コンピューター)」ではない現時点の不完全な量子コンピューターであっても、既存方式のコンピューターでは到達し得ない計算能力を有することを示せた点にある。

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