OSS(オープンソースソフトウエア)ビジネスの潮流は「Kubernetes」によって一変してしまった。そのことを改めて感じさせる出来事があった。OSSビジネスを営む米メソスフィア(Mesosphere)が、社名と事業モデルを変更すると発表したのだ。

 メソスフィアは2019年8月5日(米国時間)に社名を「D2iQ」に変更したと発表した。同社はOSSである「Apache Mesos」の主要開発元であり、Mesosの商用版である「Mesosphere」や「DC/OS」を販売していた。MesosやDC/OSが何なのかを分かりやすく言うと「Kubernetesのようなもの」である。

 MesosやKubernetesはいずれも「コンテナオーケストレーション」のソフトウエアだ。サーバーやストレージからなるリソースプールを構築して、その上でコンテナ化したアプリケーションを自動運用するのに使う。

 Mesosは米グーグル(Google)が自社用に開発したデータセンター管理ソフトである「Borg」を参考に作られたOSSだ。一方のKubernetesはグーグル自身が開発したOSS版のBorgだ。ラーメン屋で例えるなら、Kubernetesは本家からのれん分けした支店・兄弟店。Mesosは「○○インスパイア系」などと称して本家に似た味のラーメンを売っている競合店ということになる。

インスパイア系が当たり前だった

 クラウド分野のOSSの世界はかつて「インスパイア系」の方が当たり前だった。分散データ処理ソフトのOSSである「Apach Hadoop」も、グーグルのビッグデータ処理ソフトである「MapReduce」や「Google File System(GFS)」をまねて作られた。米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の「Dynamo」をまねた分散データベースの「Apache Cassandra」など、似た経緯で作られたソフトが多数あった。

 今から15年ほど前、最先端テクノロジーの開発元が従来の大手ITベンダーからグーグルやアマゾンなど広告業や小売業を本業とするネット事業者へとシフトした。ITベンダーはテクノロジーを他人に売るために開発していた。それに対してグーグルやアマゾンは自社で使うために最新テクノロジーを開発した。そのためグーグルやアマゾン以外の企業にとっては、最先端テクノロジーの入手が難しくなった。

 そこでグーグルやアマゾンのテクノロジーを使いたい競合他社が、両社が公表する学術論文などを基に、それらをまねたソフトをOSSとして開発し始めたのだ。筆者は10年ほど前、こうして作られたOSSを「クラウド育ちのOSS」と呼び、大きな動きになっていると紹介した。

 しかしそれから10年がたち、状況は変化した。Kubernetesのようにグーグルが自社で開発するソフトをOSSとして公開するようになった。これに影響を受けたのが、インスパイア系OSSで商売していたスタートアップだ。メソスフィアがD2iQに社名を変更したのも、同社の事業モデルがMesosの商用版販売から、Kubernetesの商用サポートへと大きく変わったからだった。

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