物体の立体的な形状に基づいてそれが何かを判別する「3D(3次元)画像認識」は、AI(人工知能)の応用領域を広げる上で最重要の技術になりそうだ。米グーグル(Google)が2019年5月20日(米国時間)に公表した「肺がん診断AI」は、3D画像認識の威力を世に知らしめた。

 グーグルは医学雑誌「Nature Medicine」に論文「End-to-end lung cancer screening with three-dimensional deep learning on low-dose chest computed tomography」を掲載。同社が「3次元ディープラーニング(深層学習)」技術を使い開発した肺がん診断AIが、人間の放射線科医に匹敵するか上回る精度で早期がんを見つけ出したと発表した。

CTスキャン画像から肺がんを診断しているイメージ図
出典:米グーグル
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 この肺がん診断AIは複数枚のCTスキャン画像に基づいて肺内部の3Dモデルを作り出し、組織の立体的な形状に基づいて悪性腫瘍の有無を判別する。教師データには放射線科医が診断済みの4万5856件の胸部CTスキャン画像データを使用。別の6716件の胸部CTスキャンデータに対してこの機械学習モデルを適用したところ、精度の指標「AUC(Area Under the Curve)」で94.4%に達する正確な診断ができたという。

進化するがん診断AI

 CTスキャン画像は人間の体を輪切りにするように撮影したものなので、立体的な形状を推測するには複数枚のCTスキャン画像が必要だ。その点は人間の放射線科医もAIも変わらない。そしてグーグルが開発したAIは、1回のCTスキャンによって得られた複数枚の画像データを基に診断する場合、人間の放射線科医を5%上回る数の悪性腫瘍を見つけ出したという。

 悪性腫瘍が無いのに誤って有ると診断する「偽陽性」の件数も、人間の放射線科医に比べて11%少なかったとする。同じ人の過去と現在のCTスキャンデータを使って診断する場合の結果は、人間の放射線科医とほぼ同じだった。

 グーグルは2018年10月にも乳がんのリンパ節への転移の有無を診断するAIを深層学習を使って開発したと発表している。ただしこちらのAIは患者の体から採取したリンパ節の病理標本を光学顕微鏡で撮影した画像を使い、組織の2次元(2D)的な形状に基づいて診断していた。それに対して今回発表したAIは、患者の体を傷つけずに撮影できるCTスキャン画像を使い、3次元的な形状に基づいて診断している点が新しい。

ディープマインドの技術を応用

 複数のCTスキャン画像から得られる3次元的な形状を深層学習で解析する技術には、グーグルの子会社である英ディープマインド(DeepMind)が開発した「Inflated 3D ConvNet」などを使っている。もともとは動画(2次元+時間)から人間の動きを判別する用途で開発した3D画像認識技術で、それを医療分野に応用した。

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