2020年夏季五輪の開催に合わせ、「東京大改造」が進んでいる。五輪は街づくりのゴールではなく、あくまでもスタート。五輪レガシーを生かして、どのように東京、日本の街づくりを進めていくべきか。ロンドン五輪計画に携わった建築家の山嵜一也氏が、大会6年後のロンドンを現地視察。設計者など関係者へのインタビューを通じ、東京五輪後の街づくりに向けたヒントを探る。(日経 xTECH/日経アーキテクチュア)

 2020年東京五輪の開幕まで500日を切った。都内では湾岸部を中心に競技会場が立ち上がり、多くの場所で再開発が進んでいる。建設業界は活況を呈しているが、競技会場の建設およびインフラの整備が一区切りした後はどうなるのか。

 そのヒントが英国・ロンドンにある。12年に開催されたロンドン五輪には、招致段階から大会後のレガシー戦略が盛り込まれていた。大会から6年たち、レガシー計画はどのように実行されたのか。03年から12年まで現地の設計事務所、アライズ・アンド・モリソン・アーキテクツ(Allies and Morrison Architects、以下A&M)に勤務し、ロンドン五輪(招致計画、レガシー計画、五輪競技会場現場監理)に関わった筆者が、五輪開催後の街と建設業界の様子をリポートする。

ザハ設計の競泳会場は市民プールに

 レガシー視察のため、筆者は元同僚との待ち合わせ場所に向かった。競泳会場だった「ロンドン・アクアティクス・センター(London Aquatics Centre)」だ。建築家、故ザハ・ハディド氏が設計を手掛けたことで知られる。かつての五輪メインパーク「クイーン・エリザベス・オリンピック・パーク(Queen Elizabeth Olympic Park)」内にある。

現在のアクアティクス・センター(市民プール)全景。ザハが本来目指した外観は、曲線が伸びやかで美しい(写真:山嵜 一也)
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大会時のアクアティクス・センター(競泳場)全景。“みにくいアヒルの子”と揶揄(やゆ)された仮設観客席が本体から伸びている(写真:山嵜 一也)
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 五輪競泳場は、市民プールとして生まれ変わっていた。ロンドン五輪組織委員会は設計段階で、ザハ側が当初提示した建物規模をレガシーの観点から縮小した。大会後の市民プールとしての利用に適切な規模を前提に、多くの観客が訪れる大会時の対応として、“みにくいアヒルの子”と揶揄(やゆ)された仮設観客席を設置するという案を了承させたのだ。スター・アーキテクトを登用するには、それだけ覚悟が発注者側にも必要であることを示すやり取りだろう。

現在のアクアティクス・センター(市民プール)内観。大会時の仮設観客席(下の写真)は撤去され、巨大な側面のガラスがはめ込まれた。ガラスには採光を調整する青色フィルムが貼られている(写真:山嵜 一也)
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大会時のアクアティクス・センター(競泳場)内観。仮設観客席の最上階の席へは階段を延々と上った(写真:山嵜 一也)
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