私用のパソコンやスマホが自由に使える職場環境だと、社員が亡くなったときの引き継ぎが困難になる恐れがある。例えば、BYOD(Bring Your Own Device)として会社が認めた使い方であっても、管理ツールを使っていなかったり、運用ポリシーが明確でなかったりすると、私物と何ら変わらない。

 前回のモデルケースで、事故死したAさんが私物のスマホを業務でも使っていた場合を想定してみよう。直近の通話やチャットのやり取りがスマホに残っていたとしても、Aさんが自分で設定した端末のパスワードをBさんが知らなければ、これまで説明してきた通りアクセスすること自体が相当難しくなる。

私物のスマホを業務で使っていると手詰まりになりやすい

 スマホにロックがかかっていなくても、今度は「他者のスマホを無断で操作してよいのか」という問題が出てくる。Aさんが亡くなった今、スマホの所有権は遺族(法定相続人)に移っていると考えられる。少なくとも会社ではない。

故人が残した私物のスマホは、会社が自由に扱ってよいものではない。
(撮影:古田 雄介)

 Aさんは直近まで仕事で使っていて、業務管理アプリも恐らくインストールしている。取引先とのやり取りや、進行中のプロジェクトの最新リポートも保存されている可能性が高い。それでもスマホ自体の所有権は会社とは直接関係の無い人が持っているという状況だ。会社が支給した業務用スマホと同じように扱ってもよいものだろうか。

 日本デジタル終活協会代表の伊勢田篤史弁護士は「否」と言う。「たとえ業務用で使っていても、会社に端末の所有権がありませんから難しいでしょう」(伊勢田弁護士)。

 インストールしている業務管理アプリの中に会社のファイルがあったとしても、そもそも所有権は有体物にかかる権利のため、デジタルデータ⾃体の所有権をよりどころにするのは難しいそうだ。著作権を有する場合はそれを主張できるとのことだが、それでも他人の端末内に置かれている以上、端末へのアクセス権がまず求められることになる。とにかく「端末は誰のものか」という観点が重要になるようだ。

 この原則を踏まえると、無難なのはAさんの持ち物のうち、確実に会社が支給したとみられる機材に限定して手がかりを探ることだろう。パソコンが支給されたものならそのパソコンを操作する。USBメモリーだけが支給品なら、それをBさんのパソコンに挿して作業するというイメージだ。