クラウドサービスの「Evernote」が、機械学習のために利用者のノートを社員が閲覧できるように2017年1月からプライバシーポリシーを変更すると発表した。リリース直後から世界中で猛反発が起こったため、すぐさま同社は発表内容を変更。利用者が自らの意思で機械学習に参加(オプトイン)しない限りは閲覧されないルールにしたが、それでも収まらずにポリシーの変更自体を見送ることになった。

プライバシーポリシー変更の撤回を表明するエバーノート(Evernote)のリリース。
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 現状、オンラインサービスの利用規約は、本社や提供元が拠点を置く国や地域の法律に違反しない範囲で、運営者の裁量によって決められている。そして、サービスの成長具合や業界の動向、利用者からの要望などによってしばしば変更される。

 国内のプロバイダーサービスをみても、2009年ごろからの動きとして一身専属性契約や法定相続人への引き継ぎが可能な承継対応に変更する動きが続いている。

 インターネット黎明期は利用者の「通信の秘密」を守ることを重視する傾向があり、一身専属制を採るのが普通だった。ところが、2010年前後からは親族から相続関連の相談が届くようになり、「So-net」や「BIGLOBE」のように要望を受けて変更するプロバイダーが相次いだ。また、LINEのようにグループ全体で一身専属制にしているサービスでも、故人のLINE Pay残高は遺族の指定口座で払い戻しするなど柔軟に対応している例もある。

 一方で、電子書籍販売サービスでは珍しく、購入した書籍やアカウントが相続できる規約だった「eBookJapan」(2019年4月時点ではebookjapan)は、2019年2月に同業種の「Yahoo!ブックストア」と統合した流れで相続不可な一身専属制に切り替えている。これまで相続に関する相談を受けたことがないとのことで、現実的なニーズに沿って調整したとみられる。

 この特集の第1回で解説した通り、デジタル遺品の中でもオンラインにある遺品は「家の外」、つまり社会とつながったところに置かれている。手持ちのデジタル資産の運用ルールが死後にガラッと変わることもあり得る。

 死後も秘密にしたいデータをオンラインストレージに保存したり、死後も誰かに引き続いてほしいサイトを持っていたりするなら、上記のような変化も念頭に置きつつ長い目で見て通用する道筋を立てておきたい。

古田 雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。「古田雄介のアキバPick UP!」(ITmedia PC USER)、「インターネット跡を濁さず」(d.365)、「ネットと人生」(インプレス シニアガイド)などを連載。著書に「ここが知りたい! デジタル遺品」(技術評論社)、「故人サイト」(社会評論社)、「死とインターネット」などがある。