家族や同僚は必死になって中を開けようとするだろう。開けられない場合は専門サービスに依頼したり、購入履歴や通話履歴などあらゆる痕跡から中身を探ろうとするかもしれない。そこまでの行動力に、生前に築いた鉄壁は果たして耐えられるだろうか。

 仮に端末内は鉄壁だったとしても、オンライン上のアカウントをすべて秘匿するのは難しい。Google アカウントやApple ID、Microsoft アカウントなどが判明すれば、そのパスワードは所定の手順を踏めば再発行されるので、クラウド上のバックアップやブラウザーの検索履歴などが見つかり、全容とはいかないまでもかなりの範囲まで手が届きそうだ。

 これに対抗にするには、生前から隠したいデータを扱う際は別のアカウントで作業したり、Webブラウザーをシークレット(プライベート)モードにしたりするといった措置が有効かもしれない。ただ、そうするとユーザー自身のデジタル世界はどんどん窮屈になっていく。

 第1回で掲載したデジタル遺品のイメージ図を感情面で色分けしてみた。本人が隠したいと思っているものが青色、家族がどうにか探し出したいと思っているものが赤色だ。

感情面を強調したデジタル遺品のイメージ。
(筆者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 家族や同僚は赤色のデータやアカウントを探すためにあらゆる痕跡を調べていくことになる。対する本人は“万が一の”状態になっているわけで、新手で対抗する術はない。残された側を血眼にさせた時点で負けだと思っておいたほうがいい。

 それよりも、彼ら・彼女らの労力が最小限で済むように日頃から意識しておくことが、本当に隠したいものを隠すためには効率的な対策になる。自分が死んだ後に家族や同僚が欲しがりそうな情報は、端末ごとに分けて保存したり、同じところに保存するにしても分かりやすい場所に配置したりして、余計な詮索をされないように手を打つという作戦だ。

 冒頭のCさんにも同じようなことを伝えた。私物の端末には会社のデータが無いので、家族が欲しがるデータはスマホに集約するように意識するという。その上で日頃から家族に「何かあったらスマホに全部入っているからね」と伝えておき、第11回で紹介したメモを残しておけばよいのではないかと思う。

赤色と青色をできる限り別々にして使う意識があると、隠すにしても手を打ちやすい。
(筆者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 隠したいファイルと家族が見たがるファイルを同一端末に保存せざるを得ない場合は、見せたいファイルをパソコンのデスクトップ画面やスマホの1ページ目に置いておくのがいいかもしれない。そうやってとにかく分かりやすい導線を作っておくことだ。

古田 雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。「古田雄介のアキバPick UP!」(ITmedia PC USER)、「インターネット跡を濁さず」(d.365)、「ネットと人生」(インプレス シニアガイド)などを連載。著書に「ここが知りたい! デジタル遺品」(技術評論社)、「故人サイト」(社会評論社)、「死とインターネット」などがある。