筆者はたびたびデジタル終活について講演をしている。そうした講演が終わった後に、デジタル資産についての相談として「誰にも見せたくないものはどうしたらいいのか」とこっそり聞かれたことが何度かある。

 例えば、東京都内で自宅暮らしの会社員男性Cさん(30代)は、イラスト共有サイトで成人向け作品を多数発表しているという。そのことを、万が一のことがあっても家族や会社の同僚には絶対に知られたくない。どうしたらいいだろう、とのことだった。

(撮影:古田 雄介)
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「壁を作るより先に道を作っておく」が守りの鉄則

 Cさんは、自宅の自室にあるデスクトップパソコンのみで作業したり、データを保管したりしているという。そこを守り切れば少なくとも決定的な証拠は辿られないだろう。

 それならパソコンのドライブ自体を暗号化して、暗号を解く鍵が周囲に伝わらないようにすればいい。WindowsならHomeエディション以外で暗号化機能「BitLocker」が使えるし、macOSなら暗号化機能「FileVault」を利用するのが手っ取り早いだろう。パソコンにスマートフォン並の「鉄壁」を作って、その鍵を封印するわけだ。

 しかし、である。

 鉄壁作りよりも重要なのは、万が一の際に自分のデジタル機器を調べようとする家族の動きを想定して導線を作っておくことだ。「壁より先に道」が守りの鉄則と覚えておこう。

※紹介する事例はプライバシーを保護するために、本筋を損ねない範囲で脚色を加えています。

残された側の行動をすべて制御するのは無理

 隠したいデータが入っているパソコンに、家族共有の思い出の写真やメインの銀行口座情報、進行中の仕事のファイルが入っていて、他にバックアップしていないとしたらどうなるだろうか。