2019年1月、カナダ最大の仮想通貨(暗号資産)取引所だったクアドリガCXが、裁判所に破産申請して話題となった。カナダ放送協会(CBC)の報道によると、11万5000人の顧客資産を含む2億5000万カナダドル(209億円相当)分の仮想通貨の秘密鍵を一手に管理していたCEO(最高経営責任者)が2018年末に急死し、すべての資産に触れられなくなったのが原因だという。

 捜査の進展によって、CEO個人への資金流入の可能性が指摘されるなど、複雑な事態になっているようだが、仮想通貨のリスクを示す端的な事件であることは間違いない。

 仮想通貨を所持している人が、家族に秘密鍵などアクセスに必要な情報を何も伝えずに亡くなったら何が起こるのだろうか。

2019年4月時点のクアドリガCXトップページ。裁判所から債権者保護の命令が下された旨を伝える文面とQ&Aのみの簡素なレイアウトになっていた。
(出所:クアドリガCX)
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 日本仮想通貨交換業協会によると、国内での仮想通貨の取引額は2017年度に現物12兆7140億円、証拠金や信用、先物系の取引で56兆4325億円に上る。どちらもその前の年からは指数関数的に増えており、ここ1年はとりわけ後者の伸びが顕著だ。稼働中の口座数は2018年12月時点で160万件を超えている。

 取引の増加に伴い、トラブルも増加している。データトラブル対応会社のデジタルデータソリューションに届く仮想通貨関連の相談は、ここ最近は遺品事案に限らず顕著に増加しているという。内容は、秘密鍵を忘れた、廃止された「リップルトレード」に通貨を保持したまま移行しなかったことでアクセスできなくなった、など様々だ。

 日本デジタル終活協会代表の伊勢田篤史弁護士は「仮想通貨は、デジタル遺品の中で今一番危ない存在かもしれません」と警鐘を鳴らす。

日本デジタル終活協会代表 伊勢田篤史弁護士
(撮影:古田 雄介)
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 「いわゆる“億り人”(仮想通貨で億単位の資産を所持している人)になった方が亡くなると、亡くなった時点での評価額で相続税が計算される可能性が高いと言えます 。遺族が仮想通貨のことを知らないでいた場合は、突然高額な相続税が課せられる可能性があります。さらに、家族が仮想通貨にアクセスできないとしたら最悪の事態になりかねません」(伊勢田氏)

仮想通貨のデジタル遺品が危険な理由

 仮想通貨は、改正資金決済法が2017年4月に施行されるなどして、現在は相続税の対象とみなされるという見解が一般的になっている。