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 米ライドシェア最大手のウーバー(Uber Technologies)は2019年4月11日、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)を正式に申請した。SECに提出したS-1資料(証券登録届出書、開示書類)から、約3400億円の営業赤字であることが判明した。同年3月29日に上場したシェア第2位の米リフト(Lyft)も約1000億円の赤字である。現状では収益よりもサービスの普及を優先した結果だが、これらの数字にやきもきしている投資家も多い。両社が黒字化、そして高収益ビジネス化の鍵として注力しているのがレベル5の完全自動運転の開発である。日本企業の元駐在員でシリコンバレーに24年在住し、現在はリフトの運転手をしている吉元逸郎氏に、リフトのS-1資料を基に自動運転の開発の現状や、ビジネスへのインパクトを解説してもらう。(内田 泰=日経 xTECH)

 「お客さん、どちらにお勤めですか?」

 筆者がそう質問したら、後部座席の乗客から面倒臭さそうに「アップル」という返事が返ってきた。

 「何をやっているんですか?」

 「その質問には答えられないことになっている」。ぼそっとした返事で、それ以上会話が続かなくなってしまった。

 これが米グーグル(Google)の社員だと、結構オープンに詳しく何をやっているのかを答えてくれることが多い。社内規定の違いだろう。米アップル(Apple)の社員はどちらかというと秘密主義だ。結局、その乗客をサニーベール市にあるアップルのオフィスで降ろしたら、ちょうど、同社が開発する自動運転車が出てくるではないか。

 「なんだ、自動運転車関連の研究開発をやっているんだ。別に隠し立てするようなことじゃないのに・・・」。筆者は独り言をつぶやいた。せっかくだから、写真を1枚撮っておこう。その車を追いかけてパシャリとやったのが、下の写真だ。

筆者がシリコンバレーの道路で出くわしたアップルの自動運転車。やたらと多数のLiDAR(レーザーレーダー)を搭載している
(写真:筆者)
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 スマートフォンで世界をリードするアップルだが、実はカリフォルニア州陸運局(DMV:Department of Motor Vehicles)が公開している情報によると、自動運転関連の開発を手掛ける48社(下の表、アルファベット順)の公開報告書(Disengagement Reports)の中で、ドライバーが危険を察知して自動運転を強制解除した回数でアップルが一番多かったそうである。

 そのことと関連があるかどうか真偽は定かではないが、不名誉な結果を受けて約190人のアップル社員が職を失ったとの報道も最近あった。

(表:筆者)
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 カリフォルニア州では、ベイエリアを中心に多数の会社の自動運転車が走り回っている。筆者が最もよく目にするのは、サンフランシスコ市では米ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転車開発部門であるGM Cruise、シリコンバレーでは米アルファベット(Alphabet)傘下のウェイモ(Waymo、グーグルからスピンアウト)の自動運転車だ。

 特筆すべきは、カリフォルニア州内の公道において今のところ運転席にドライバー不在でもテスト走行ができる許可証をもらっているのはウェイモだけである点。ウェイモが開発で一歩先んじているのが現状のようだ。

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