日本や欧州で注目度が高まっているMaaS(マース)。その中核を成すサービスがライドシェアだ。しかし、タクシー業界の反発が根強い日本は“鎖国状態”にあり、ライドシェアサービスの最新事情についての情報は少ない。一方で、米国では既に“市民権”を得ており、同サービスで市場シェア2位のリフト(Lyft)は2019年3月29日に株式上場(IPO)を果たして、時価総額が約2兆6000億円(IPO時点)の企業となった。業界首位のウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)も5月にIPOを予定している。では、急拡大するライドシェアサービスの実態はどうなのか。元日本企業の駐在員でシリコンバレーに24年在住し、現在はリフトの運転手をしている吉元逸郎氏に、リフトが株式公開に当たって公開した資料の分析、そして運転手だから知っている実情を含めてライドシェアサービスの現在地と今後の可能性を解説してもらう。(内田 泰=日経 xTECH)

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 「サンフランシスコの街の眺めはやっぱり最高!」

 ブラジルからやって来た若いカップルは感嘆の声を上げた。場所はサンフランシスコの観光名所になっている、市街を一望できる小高い丘「ツイン・ピークス」だ。彼らとは車中で会話が弾み、楽しいひとときを過ごした。乗客を降ろした後、リフト(Lyft)のドライバー用アプリをオフラインにして筆者も休憩を取ることにした。

ツイン・ピークスからサンフランシスコの市街地を望む。マーケット・ストリート(中央の通り)沿いにウーバーの本社が、海岸沿いのメジャーリーグのジャイアンツ・スタジアム近くのチャイナ・ベイシンにリフトの本社がある
(写真:吉元逸郎)
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 「ウーバーやリフトの本社はどこにあるの?」。先ほどの乗客に聞かれたので、指さしながら教えてあげた(上の写真のロゴ付近)。実は、激しい顧客獲得競争を繰り広げている両社の本社は、車で10分(3km)程度の距離しか離れていない。

リフトの乗車アプリでツイン・ピークスからサンフランシスコの中心地であるユニオン・スクウェア行きへの配車を手配する画面
(図:リフト)
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 車に戻ってドライバー用アプリをオンラインにすると、さっきのお客からまた呼び出された。GPS(全地球測位システム)の位置情報で筆者が一番近くにいたため、再び呼ばれたわけだ。

 このように、ライドシェアサービスは米国市民の“足”としてだけでなく、海外からの観光客やビジネスパーソンにも日常的に使われている。仮にツイン・ピークスからタクシーを呼び出そうとしたら、まず来てもらえないだろう。来てくれるとしても乗車するまでに最低でも20分は待たされるし、料金も倍以上はするはずだ。これは、ライドシェアがモビリティー(移動)サービスの可能性をぐんと広げている事例のほんの一つだ。

 では、短期間で米国市民の生活に密着したものになったライドシェアサービスは、実際にどの程度使われているのか。リフトは2019年3月29日の株式上場を前に、米国証券取引委員会にS-1(投資家保護を目的として企業の詳細の事業内容や財務諸表、潜在的なリスク、株式公開で調達予定の資金等に関する情報を公開する)資料を提出した。そこに書かれた詳細情報から、ライドシェアサービスの実態を見ていこう。

筆者とリフト本社のサービスセンター。車両はリフトの宣伝カー
(写真:吉元逸郎)
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