通信事業の成長が鈍化するなか、携帯大手が力を入れるのは非通信領域の成長拡大だ。ソフトバンクはヤフーの子会社化により同社と共同でQRコード決済のPayPayに力を入れる。親会社のソフトバンクグループが「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を通じて投資するAI(人工知能)関連企業の日本展開も支援する。宮内謙社長兼CEO(最高経営責任者)に今後の戦略を聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経 xTECH IT 編集長、榊原 康=日経 xTECH IT 副編集長)

宮内 謙(みやうち・けん)氏
1973年に京都府立大学を卒業し、77年に日本能率協会入職。84年に日本ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)入社、88年に取締役。2013年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)副社長。15年にソフトバンク社長兼CEO(最高経営責任者)、18年に社長執行役員兼CEO。ソフトバンクグループ取締役やヤフー取締役も兼務する。1949年生まれの69歳。(写真:村田 和聡、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

通信以外の新領域では、ヤフーと共同で手掛けるQRコード決済サービス「PayPay」に相当な力を入れています。

 PayPayはものすごい手応えがあります。お叱りも受けましたが、我々が最初に100億円キャンペーンを打ち出し、業界全体が活性化したのではないでしょうか。PayPayの登録者数も(開始から)わずか4カ月で400万人を突破しました。

 100億円キャンペーンの第1弾は高額商品まで対象に含めて還元しましたが、第2弾からは利用の習慣化に向けた還元に切り替えました。コンビニエンスストアをはじめ、加盟店も急速に拡大しており、ドラッグストアについてはほぼ網羅したのではないでしょうか。「ヤフオク!」における商品代金の支払いや受け取りをはじめ、「Yahoo!ショッピング」での支払いにも対応しました。

 我々はスマホの利用シーンを増やしたいんです。他社のQR決済サービスもそうですが、スマホはもう完全に財布ですから。財布がないと困るので、家に忘れたら取りに戻りますよね。以前であればスマホを忘れても通信手段がなくなる程度でしたが、ついに財布まで入って完全になくてはならないものになりました。スマホに新たなバリューを作ることができたと思っています。タクシー配車サービスの「DiDi」などもしかりです。普及率が低い市場に今までにないバリューを提供する。だから、ものすごい成長余地があります。

金をつぎ込むだけ、親子になれば利害の調整はゼロ

競合も多いですが、PayPayはどうやって勝ち抜いていきますか。

 簡単な話です。金をつぎ込むだけです(笑)。絶対に勝ちます。だからソフトバンクグループにも50%分資本参加してもらいました。一番の先生は中国です。とにかく「支付宝(アリペイ)」と「WeChatPay(ウィーチャットペイ)」の戦争を見て勉強しています。面白いことに中国では皆、両方を使っています。最初はアリペイが全部(勝つ)かと思っていましたが、別に独占的でもないんです。

日本でも2社程度に収束していくのでしょうか。

 そう思います。もちろん、たくさんあって構いません。でも全国どこでもユニバーサルに使えるとなると、加盟店の数が重要です。今、我々が自ら加盟店を開拓している理由は完全にコミットしてもらうためです。他社は互いに相乗りをしていますが、我々もその横からどんどん入っていきます。営業が全国を回って店舗改革を進めています。アリペイは当初、店舗のシステム開発費まで全部出していたそうです。

ヤフーを子会社化した狙いも関係してくるのでしょうか。

 完全にそうです。PayPayにはインドでモバイル決済を手掛ける「Paytm」とヤフーから技術者が来て、我々は営業を出して一瞬でサービスを作り上げました。面白い機能やサービスをよくもあれだけのスピードで次から次へと追加できるなと、褒めていただくことが多いです。

 それに今後はAI、IoT、ビッグデータの時代が来ます。PayPayはFinTechのほんの一部にすぎず、メディアや広告の事業をはじめ、ヤフーと我々の人材を組み合わせることで生まれる本当の相乗効果はこれからです。兄弟会社でも連携できるのではないかとよく言われますが、ヤフーは公開企業なのでそんなに勝手にはできません。親子になれば利害の調整はゼロです。

合併は考えていないのでしょうか。

 永遠にないとは言いませんが、やはりヤフーはニュートラルな会社なのです。他社では「経済圏」と言っていますが、あれは嘘だと思っています。PayPayも経済圏なんて言ったら誰も入りませんよ。だから、これから始める様々なサービスはオープンで進めないといけません。囲い込みみたいな発想はちょっと時代錯誤ではないでしょうか。ヤフーはまさにユニバーサルなサービスを展開しているので、合併しないほうがよいのではないかと僕は思っています。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら