一度は完全に国内生産から撤退した機械式腕時計──。セイコーインスツル(千葉市)は、その機械式腕時計の生産を1990年代に入って再開し、2004年には専用の高級工房まで開設した。そこでは「現代の名工」を含む時計技能士がメード・イン・ジャパンの逸品を造り出す。機械式腕時計を復活させるためには、多くの技術者の強い意志と努力が必要だった。

久保田浩司
(写真:栗原克己)

「そんなばかな! 後一歩という所まで来ていたのに」

「我々は必ず勝てます」

「納得できません!」

 受話器を手に声を荒げるのは、設計課の課長、久保田浩司。温厚な性格の彼が、大声を張り上げることなどめったにない。それだけに、周囲には緊張が走った。ただならぬ事態が発生したことを皆が察知した。その断片的な会話の中身から、それが「ニューシャテル天文台コンクール」に関連したことらしい、と。

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