HUD(ヘッド・アップ・ディスプレー)に機能を追加する形で、AR(拡張現実感)の適用がクルマで始まった。安全性や利便性を高める目的で開発が進む。自動運転の水準が高くなる将来には、娯楽や広告に着目した新しいビジネスも実現可能となる。これを商機と捉え、これまでHUDを手掛けてこなかった日本の部品メーカー、車載機器メーカーも相次いでAR技術の開発に乗り出している。

 視線検知カメラを使わずに、視点が横にずれても映像と対象物の位置をずれにくくする技術を開発しているのがコニカミノルタだ(図1)。対象物までの距離を高い精度で推定できるステレオカメラと、映像の焦点距離を変えられる技術を組み合わせて実現する。視線検知カメラを省いて、安価にしやすい。2019年までに技術を実用化し、アルプスアルパインに提供していく。アルプスアルパインは、2022年3月までに同技術を適用したHUDを量産したい考えだ。

図1 コニカミノルタは視線検知なしにAR
2019年までの実用化を目指す。(a)車速に合わせて映像の焦点距離を変える。(b)従来のHUDは視点が動くと表示がずれる。(c)開発品は視点が動いても対象物と映像の位置は変わらない。(出所:コニカミノルタ)
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 ステレオカメラで、車両や歩行者など対象物までの距離を高い精度で推定し、対象物と同じ位置に映像の焦点を合わせる。同じ距離に映せれば視点が横にずれても、対象物と映像の位置は変わらないように見える。

 車速に応じて焦点位置を変えることもできる。例えば、車速が40km/hのときは40m先に、80km/hのときには80m先に映像を映す。視認性を高められる。映像の表示装置にはDMD(Digital Mirror Device)を使う考えだ。

 コニカミノルタは、東京大学教授の石川正俊氏らの研究室と3次元(3D)虚像投影を高速にする技術を共同で研究している。同研究室には高速画像処理や高速画像投影、焦点を変える技術があり、これらに同社の光学やセンシングの技術を融合することでクルマでARを実現するという。

図2 パイオニアはレーザー光で高い輝度を実現
2020~2022年をめどにレーザー光を用いたARの実用化を目指す。写真は過去に手掛けていた後付けのHUD。(撮影:日経 xTECH)
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 ARの映像生成にレーザー光を使う技術を提案するのがパイオニアだ(図2)。TFT(薄膜トランジスター)液晶ディスプレーやDMDに比べて、映像の輝度を高めて見やすくできるとする。2020~2022年の実用化を目指す。

 カラーのレーザー光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーで走査して透過型スクリーンに映像を描画する。同スクリーンに入射したビームは拡散し、レンズで方向を調整した後にフロントウインドーに映像を表示する。

 表示範囲を簡単に変えやすいことも特徴の1つ。MEMSミラーの動作角度を変えるだけで、レーザーの走査範囲を変えられるからだ。車両の種類によって表示範囲を変えたい要求に対して、1種類の機構で対応しやすくなる。液晶ディスプレーやDMDを映像生成装置に使う場合は、装置の大きさそのものを変える必要がある。機構全体の設計を見直す範囲が大きくなる。

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