中国・深セン中心部で日産5000台規模の工場を運営する藤岡淳一氏のジェネシスホールディングス(東京・千代田、以下、ジェネシス)。日本法人もあるが、れっきとした中国の中規模の企業だ。同社はあまり儲(もう)からない日本のものづくりスタートアップからの量産依頼を多数引き受けている。なぜスタートアップの受託生産を引き受けるのか。その理由を聞いた(聞き手=日経ものづくり編集長 山田 剛良/同副編集長 吉田 勝、構成=コヤマ タカヒロ)。
藤岡氏には2007年に家電ベンチャーを起業し、自ら企画・製造を行い、在庫を持って商売をしていた経験を持つ。その家電ベンチャー経営を経て深センで工場を立ち上げた。日本のスタートアップからの依頼を引き受けるのは、どちらかというと起業した後輩たちを応援するという側面が大きく、決してビジネスにはなっていないと語る。
「以前の会社ではデジタル家電全般を取り扱っていました。液晶テレビやDVDプレーヤー、デジタルカメラなどです。個人的にはそこでやりきったと思っていて、次は受託製造の会社をやろうと決めてジェネシスを創業したんです。最近は、ハードウエアスタートアップがたくさん出て来ていますよね。企画や製品の差異化を考えるのはそういう尖(とが)った若手がやればいい。私はハードウエアスタートアップの先輩として、彼らを支えてあげようと裏方に回ったという感じですね」
しかし、スタートアップの製品を受託製造しているだけでは工場は運営できない。メインとなるのは国内のさまざまな企業からの受託開発・製造だ。こうした顧客は製品を金型から造り、何万個/月という発注をくれる。一方のスタートアップは1000個程度の発注がほとんど。さすがにその規模では金型から起こしていてはコストが合わない。深センといえども、中国の普通の工場では1000個程度の基板やパーツの製造には応じてくれないことが多いという。
「ジェネシスは多数の企業からの受注を持っているので、電子部品やオリジナル基板、筐(きょう)体を調達できるサプライチェーンを自前で抱えています。そこにねじ込む形でスタートアップの1000個単位の注文に対応するのです。正直言ってあまり利益は出ません。製造も大口のお客さんの製造が空いているタイミングを狙って造る。さらにうちが使いやすい・造りやすい部品を提案し、設計を変更して採用してもらうこともあります。『量産する場合はこのパーツになるから、それに合わせて設計やソフトウエアも組み直してくれ』と話します。そうやって赤字にならない範囲で引き受けていますが、スタートアップの仕事を引き受けても決して儲かるわけではないんです」
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