中国・深センで自社開発品を量産したいと考える日本のスタートアップは多い。それを積極的に支援しているのが藤岡淳一氏が率いるジェネシスホールディングス(東京・千代田、以下、ジェネシス)だ。同氏に深センの今とスタートアップとの関係について聞いた(聞き手=日経ものづくり編集長 山田 剛良/同副編集長 吉田 勝、構成=コヤマ タカヒロ)。

藤岡淳一=ジェネシスホールディングス代表取締役社長
ふじおか・じゅんいち:千代田工科芸術専門学校音響芸術科卒業。大手電機メーカーへ派遣技術者として就業後、デジタル機器ベンチャー企業の開発製造責任者として、主に台湾・中国に駐在し各種デジタル機器の開発・生産に従事。2007年にエグゼモードを創業して代表取締役に就任。2011年に中国でJENESIS 香港・深セン法人を創業、さらに翌年には同日本法人を創業。現在は同法人の深セン工場で法人・ベンチャー企業向けのIoTデバイスの製造受託を主に手掛けている。(写真=日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 藤岡氏は大手電機メーカー、デジタル機器ベンチャーに勤めていた頃から中国・台湾に駐在し、デジタル機器の開発・生産に従事。その後、自らハードウエアベンチャーを率いた後、2011年に中国でEMS(電子機器の受託製造サービス)業を手掛ける「JENESIS 香港・深セン法人」を創業した。

 「ジェネシスは中国の会社です。資金調達の都合上、日本にも法人はありますが、深センで創業した中国の工場です。深センの工場の従業員数は140人ほどの中小規模で、メインで手掛けているのは、ハードウエアの製造手段を持たない企業からの製造受託です」

下請け受託をメインとする工場は激減

 IT、IoT(Internet of Things)が盛り上がる中、これまではもっぱらソフトウエアやサービスを提供してきた企業が、新事業や従来事業の価値向上の一環としてハードウエアを用意するケースが増えている。例えば、スポーツジムがスマートウオッチを会員向けに提供するといったパターンだ。ジェネシスではそういった製品の製造を主に請け負っている。以前は、深センにそうした製品を受託生産する工場が多数あった。しかし、いまやそうした工場は激減しているという。

 「深センって、もはや製造の街ではなく、ITプラットフォームをベースとするサービスを手掛けるベンチャー企業やスタートアップの街です。経済特区の外では製造サプライチェーンの街であり、その中には『組み立て』もあります。でも、人件費も高いし労働力の調達も大変。なので、みな製造だけでなく設計も請け負うODM(相手先ブランドによる設計・生産)に業態を転換しました。今は受託生産だけでは採算が合わないんです」

 この10年、深センはバブルの様相を呈しており、不動産価格は高騰し続けてきた。人件費に加えて不動産価格が上がったことで、深センの都市部で製造受託工場を続けるのが難しくなったのだ。現在も深センの都市部で工場を営んでいる藤岡氏は、同業の中国人から「そんな高い場所で受託工場をよく続けているな」と言われるという。

 「そんな状況の中でジェネシスは、自社製品を持たず受託生産だけでやっています。どうしてそれができるのかというと、1つには日本のお客さんが多いというのがあります。当社は中国企業ですけど、日本のベンチャーやスタートアップにしてみると、私という日本人がいるので、安心できるし、やりやすいと思ってもらっているのでしょう。もう1つは、中国の工場の多くが日本企業向けの商売をしなくなっているという理由もあります。そもそも受託生産はあまりもうかりません。ですから、やるなら合理的に大量生産したい。でも、我々のお客さんは量が少ない上に、品質にうるさい。中国企業はやりたがらないんです。だから私たちのところに依頼が来るのです。おかげさまでジェネシスの事業は非常に好調です」

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら