米国シリコンバレーに本拠を持つFenox Venture Capital(以降、Fenox)はグローバルで140社以上に投資した実績を持つベンチャーキャピタル(VC)である。同社がユニークなのはシリコンバレーを中心に、企業のスタートアップ投資の支援に注力しているところだ。日本企業などとの間に現在25のファンドを運用するが、そのほとんどが「二人組合」の形を採る。1社がLP(出資者)となり、FenoxがGP(運営者)となって運用する。出資企業側から見るといわゆるコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の運用パートナーとなる。

 VCが運用する投資ファンドの多くは有望なスタートアップ企業への投資により金銭的なリターンを得るのが目的。資金規模は大きい方が有利なので、GPは多数のLPを募集する形を取ることが多い。

 Fenoxが二人組合を主にするのは、出資企業がシリコンバレーで有望な新技術やそれらを持つスタートアップを探し、出資企業のビジネスにつなげる狙いがあるからだ。CVC中心の運営になった経緯やその狙いなどについて、Fenox Venture Capital 共同代表パートナー&CEOのアニス・ウッザマン氏に聞いた。(聞き手=日経ものづくり編集長 山田 剛良、構成=安蔵 靖志)

アニス・ウッザマン氏(Anis Uzzaman)
米Fenox Venture Capital共同代表パートナー&最高経営責任者(CEO)。大学進学を機に来日、東京工業大学工学部卒、オクラホマ州立大学で修士号、東京都立大学(首都大学東京)で博士号を取得。米IBM、米Cadence Design Systemsで戦略投資を主導。2011年にFenoxを設立し、現職(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 我々は金銭的なリターンだけでなく、出資企業のビジネスに直接つながるようなスタートアップを紹介し、そこに戦略的に投資していくスタイルを採っています。

 例えばアイシングループ(アイシン精機とアイシン・エイ・ダブリュ)は2018年3月にFenoxと約55億円のCVCを設立しました。世界トップの自動車関係技術へ戦略的に投資し、日本に持ってくるのを目的としています。他には双日(2019年1月)、セガサミーホールディングス(2018年10月、約22億円)、台湾のASUSTeK Computer(2017年9月、約55億円)などと同様のCVCを運用しています。

双日といえども食い込めないから我々がいる

 複数のLPが入る一般的なファンドではなく、単一のLPだけで運用する二人組合が中心のVCは珍しいが、顧客のニーズから生まれてきたという。

 VCを始めた当初は複数のLPが入る一般的なファンドを運営していました。あるときLPの1人がこの案件に直接投資をしたい、吸収合併したいと言い出しました。このような場合は他のLPの許可を取らなければなりません。このときにスタートアップとビジネスで提携したい、買収したいという目的で運用するファンドにニーズがあると分かったのです。

 最近では2019年1月に双日がFenoxをパートナーとしたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立した。もともと総合商社としてさまざまなスタートアップに投資してきた実績を持つ双日がなぜFenoxと組むのか。

 双日は総合商社としてさまざまな企業を発掘してきた実績を持っています。その一方で双日といえどもシリコンバレーのトップクオリティーの案件になかなかアクセスできない現実があります。

 その理由は2つあるとウッザマン氏は続ける。

 1つ目の理由は、事業会社からの投資を避けたがるスタートアップの存在です。ノウハウを奪われる恐れがあるからです。FenoxはVCですからセーフティーゾーンと見なしてもらえます。

 2つ目はシリコンバレーに存在する“インナーサークル”へFenoxが食い込んでいる点だとウッザマン氏は話す。

 我々はシリコンバレーだけでなく世界で多くのネットワークを持っています。シリコンバレーのインナーサークルはなかなか外国企業は入れませんが、そこに入らないとトップクオリティーのスタートアップへの出資に加われません。しかし我々のパートナー各社は誰もがアクセスできないようなスタートアップの技術を探しています。そこで現地のVCのローカルパートナーとしてFenoxの力が必要だったのだと思います。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら