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 重い資材を運んだり、中腰の姿勢で長時間作業を続けたり、建築の現場では体に負担のかかる作業が少なくない。職人の高齢化によって作業効率が落ちる、人員不足によって少ない若手の過重労働を招くといった問題は、これからいっそう深刻化するだろう。

 そんな状況の改善に役立つ手段として注目されているのが、装着することで人の動作を補助する「アシストスーツ」だ。重い物の上げ下ろしや中腰作業などの際に身に着けることで、作業能力が高まるうえに、腰痛などのリスクを減らすことができる。

アシストスーツを導入した現場の様子。職人の高齢化などの支援策として注目が集まっている(写真:イノフィス)
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人工筋肉で動作をサポート

 アシストスーツはこれまで、患者のリハビリ用、介護者の負担軽減用などを主要な用途として開発が進んできた。そのため、全身サポート、四肢サポート、握力サポートなど、強化したい部位によって様々な種類がある。

 なかでも、建設関連の現場で威力を発揮するのが、腰をサポートするアシストスーツだ。大学発のベンチャー企業、イノフィス(東京都新宿区)が開発したアシストスーツ「マッスルスーツ」も、その1つ。同社は東京理科大学工学部の小林宏教授が創業した。

 マッスルスーツは、人工筋肉を内蔵したフレームを背負って使用する「外骨格型」のアシストスーツ。電動モーターではなく、空気圧で作動する人工筋肉を採用している点が特徴だ。電力を用いないので故障しにくく、雨などの水にも強い。電源も不要なことから、屋外作業にも適している。

 人工筋肉はゴムチューブを筒状のナイロンメッシュで包み、両端をふさいだ構造。圧縮空気を注入すると、ゴムチューブが径方向へ膨らみ、ナイロンメッシュが長さ方向に収縮することで、強い引っ張り力が生まれる。このタイプは、1961年にジョセフ・マッキベン氏が開発したことから「マッキベン型」と呼ばれる。

イノフィスの「マッスルスーツEdge」のカバーを取り外した状態。背中フレームの左右に人工筋肉を内蔵。左脇にぶら下がっている手動ポンプで圧縮空気を注入して使用する。圧縮空気の注入量で補助力を調整でき、最大25.5kgfが出る。本体重量4.3kg。税別価格は49万8000円(写真:日経アーキテクチュア)
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人工筋肉が収縮して、フレームに固定したワイヤが引っ張られ、背中フレームが上体を引き起こす。その反力をももパッドで受ける(写真:日経アーキテクチュア)
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 人工筋肉は背中フレームの左右に入っており、ワイヤで両側のももフレームとつながっている。これらの機構を腰ベルトで体に密着させ、機構自体の重さを受けている。中腰姿勢をとると人工筋肉が収縮してワイヤが引っ張られ、背中フレームが後ろへ回転しようとして上体を引き起こす仕組みだ。反力は、ももパッドで受ける。