メールが相手の感情を害しやすい理由

 メールはどうして相手の感情を害しやすいのか。心理学者で、ネット上でのコミュニケーション論に詳しいF氏によると、これには心理学的な裏付けがあるという。

 まずメールに限ったことではないが、私たちは自分の仕事ぶりや成果物に対して注文を付けられたとき、人格そのものを否定された気持ちになることを理解する必要がある。例えば「このドキュメントには間違いがあるので直して下さい」と言われると、責められているように感じてしまう。その結果、怒ったり、落ち込んだりといった後ろ向きの気持ちになりやすい。

 ここで対面での会話なら、目の前に相手がいるので、相手が怒ったり落ち込んだりしないように自然と気遣いが働く。相手が怒ったり落ち込んだりした場合は、すぐにフォローするだろう。一方でメールだと、気遣いなくストレートに書きやすい。そのうえ読み手が怒ったり落ち込んだりしても、書き手にはすぐに分からないので、とりなすこともない。

 またメールだと、読み手が勝手に「相手(書き手)が怒っている」と想像しがちである。それはなぜか。

 私たちは対面や電話によるコミュニケーションでは、言葉(バーバルな情報)とともに、表情や仕草、口調、ため息、沈黙といった情報(ノンバーバルな情報)を同時にやり取りしている。誰かと会話するときには、膨大なノンバーバル情報を収集して、相手の心理状態を推し量っているのだ。

 ところがメールでは、読み手にとって書き手の心理状態を知る手掛かりは、文章(テキストデータ)というバーバルな情報だけ。不足した情報は、想像で補うことになる。このとき読み手自身が怒ったり落ち込んだりしていると、書き手の心理状態を悪く想像しがちになる。つまり、書き手が怒っているように感じるわけだ。このことが、読み手の感情をさらに害する。

メールの文章が、書き手の意図に反して攻撃的に見える仕組み
メールでは、表情や口調、身振りなどの「ノンバーバルな情報」が伝わらない。読み手は往々にして内容をネガティブに捉えがちなので、書き手が怒っているように思えてしまう
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読み手の視点に立って書く

 効率的な処理を妨げるメール、用件が分からないメール、感情を害する攻撃的メール――。こうした問題メールは、いずれもメールが普及し始めた頃から指摘されてきたものだ。しかし問題メールの数は減るどころかさらに増え、ITエンジニアの仕事を妨げている。

 問題メールをなくすにはどうすればよいのか。必要なのは、一人ひとりがメールを書く際に問題意識を持ち、常に自分のメールを検証して改善することだ。3つの問題メールに該当しないメールを書くには、相手にとって①処理しやすい、②意図が正確に分かる、③感情を害さないというメールでなければならない。そう考えれば必然的に、メールを書く際に満たすべき条件が見えてくる。

「読み手の視点」に立つメールが備えるべき条件
メールを書くうえで気を付ける本質的なポイントは、読み手の視点に立つこと。 読み手にとって、処理しやすい、意図が正確に分かる、感情を害されないメールを書くことが重要だ
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出典:日経ITプロフェッショナル、2005年3月号 特集「速効メール術」を改題して本文を再編集
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。