国土交通省の淡野博久・建築指導課長が公開シンポジウムで言及した4号特例見直しの“ホップ”と“ステップ”が、それぞれ建築確認手続きでの図書省略の廃止と構造審査の導入を意味するとすれば、現状は4号特例見直しという3段飛びの助走路に立ち、スタートするぞ、とポーズを取っている段階にすぎない。ここまで見てきたように、肝心の跳躍にたどり着くまでの助走路は思いのほか長く、“ホップ”だけでリタイアする可能性も捨て切れない。見直しはどこまで進むのだろうか。

 前回の記事で、今の調子では4号建築物の構造関係の図書省略の廃止は早くても2022、23年ごろになるだろうと推測したが、その先はどうなるのだろうか。

 審査省略の廃止については、実施の有無も含めていまひとつはっきりしない。日本弁護士連合会主催で18年10月に行われた公開シンポジウムの議論では、国土交通省の淡野博久・建築指導課長はこの点について最初から予防線を張っていた。

 日弁連で欠陥住宅問題に長く取り組み、パネルディスカッションの司会を務めた吉岡和弘弁護士は、次のように食い下がった。

 「では、今の国交省は、理念として4号特例をなくしたほうがよいという原則的な姿勢に変わりはなく、それをどうやったら混乱なくうまくやるかを検討しているスタンスであると理解してよいのか。それとも、4号特例を混乱がないように見直すことは現状ではできないと認識しているのか」

巧みな論法で国交省の姿勢を問いただした吉岡和弘弁護士(写真:日経ホームビルダー)
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 これに対して淡野課長は「論点は2つある」と前置きして、こう答えた。

 「より多くの人がチェックした方が、よりしっかりしたものができるという面はあると思う。例えば、構造計算書の適合判定がそうだ」

 「一方で、件数が特に多い小規模な建物にもそういう手順を課すとなると、大規模な建物に比べてものすごくインパクトが大きい。両方のバランスをどのように取っていくかということだと思う」

 やるのか、やらないのか。図書省略の廃止の説明よりも具体性に欠けた、どっちつかずの発言だった。チェックはしたいが、1号~3号建築物に比べて圧倒的な件数になる4号建築物の構造関係図書を審査するとなると、現場の手間や負荷は大幅に増えてしまう――。

 両者の妥協点をあえて見いだすとすれば、構造関係図書に建築士が押した承認印だけ、あるいは構造計算書や壁量計算の結論部分だけを文字通り「確認」する、といった簡易な審査風景が浮かび上がってくる。

 ただ、この程度の審査であれば、果たしてやる意味があるのかという疑問も生じてくる。建築士が責任を持って設計・工事監理するという今の前提を残したまま審査省略を廃止するのであれば、「確認」する側が責任を分担するはずもないからだ。

 審査する側が図書の内容を保証しないとすれば、申請する建築士側、特に真面目に構造計画、構造計算を行ってこれまでも設計図書を保管してきた建築士にとっては、何もメリットがない。それどころか、確認手数料は値上げされ、審査側が指導と称して設計内容に口出しする事態も考えられる。これまでより面倒が増えるだけだ。

 逆に、「建築士が責任を持つ」という前提を覆すのであれば、大仕事になる。4号建築物の建築確認手続きでの特別扱いは、建築基準法が制定された1950年から現在まで延々と続いてきた、同法の根幹を成す部分だからだ。

 4号特例を設けた前提である住宅の絶対的不足の早期解消という戦後日本の課題はとっくの昔に解決済みだ。現在は空き家が大量にあふれる時代に入っているにもかかわらず、この特例はしぶとく生き残ってきた。

 手が付けられなかった背景には、私有財産である戸建て住宅では集団規定と消防を除いて行政は基本的に介入せず、専門家である建築士が責任を持って設計・工事監理していくという建前に、一面の正当性があると考えられてきたからだろう。

 この前提をひっくり返すには、社会資本整備審議会だけでなく、政治の世界や一般社会も巻き込み、それ相応の理屈を組み立てなければならない。場合によっては法が定める建築士の独占業務の範囲を見直す議論に発展するかもしれない。ハードルは非常に高い。

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