「小売業の停滞は米アマゾン・ドット・コムの影響ではなく、怠慢だ」。アマゾンが小売業界をディスラプト(破壊)しているといわれる中、ストライプインターナショナルの石川康晴社長はこう言い切る。同社は「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)」などのブランドを展開するカジュアル衣料大手だ。

 石川社長はいまだに「店舗」対「EC(電子商取引)」といった軸で議論が進むことの多い日本の小売業を「時代遅れ」と一刀両断する。特にアパレル業界の体質は古く、いまだに店舗とECで売り上げを奪い合い、互いに競っている時代錯誤な状況が消えていないと指摘する。

ストライプインターナショナルの石川康晴社長
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 デジタルマーケティングチームは実店舗に顧客を流入させようとしないし、実店舗はECに顧客を流そうとしない状況であり、「双方が勝手にやっているケースがほとんど」(石川社長)。顧客がECと実店舗の両方で購入するようになれば、顧客の年間単価を3倍に増やせるとの調査結果が出ているにも関わらずだ。「ベイクルーズさんなどを見れば明らかでしょう。実店舗とECを両方利用する顧客を20%に伸ばせれば、アパレル業界はまだまだ成長できる」(同)。

「勘と経験と度胸」をなくすためBIツールを導入

 問題はアパレル企業の内部の話だけにとどまらない。アパレル企業が店舗を出店する駅ビルなどにも問題がある。

 例えば再配達の問題が挙げられる。ECの伸展に伴い、宅配の荷物の量がかつてないほど増えている。ヤマト運輸や佐川急便といった大手宅配業者もオペレーションに苦労している。その結果、再配達が増え、宅配業者と消費者のどちらにもストレスを与えている。再配達が問題なのであれば、消費者が毎日利用する駅の中などの店舗で受け取れるようにすればよいとの考えが浮上するのは自然だ。

 だが、すぐにそうはできないという。駅ビルなどを運営するデベロッパーが拒否するためだ。店舗で受け取る荷物は実店舗の顧客のものではなく、ECで購入した顧客の荷物だ。そのため実店舗の現場では「ECから来る顧客の接客に時間を取られるな」となってしまうという。「ECの顧客に店舗に寄ってもらえれば、実店舗の顧客になってもらう機会になる。ECの顧客が実店舗の顧客になれば、エンゲージが高まりロイヤルティーの高い顧客になる。先行する業界他社の成功事例を見ようともせず、ECの顧客を実店舗で接客するなというのは時代遅れだ」(石川社長)。

 一方、そうした課題は、顧客データや社内にあるデータを統合的に管理し、数字として見える化してこそ気づけるものだともいえる。ストライプインターナショナルは「アパレル業界にありがちなKKD(勘と経験と度胸)を完全になくすため」(石川社長)、2017年にBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入した。

 BIは企業に蓄積されたデータを分析し、可視化して迅速な意思決定を可能にするツールだ。利用の前提として、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)の設定が欠かせない。KGIは目標、KPIはその目標を達成するために管理しなければならない数字だ。例えばKGIを営業利益の最大化とした場合、KPIは製造原価や値引き率、販管費、在庫などの管理となる。それらの数値が想定通りに進んでいないとアラートを出すのがBIの仕組みだ。

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