2019年度から択一式に代わって、新設される必須科目Iの記述式論文について解説する。時代の世相を反映して、今話題になっている「問題のあるテーマ」が出題される可能性が高い。その点では国土交通白書2018と同2019を読み込んで対応することが重要だ。5テーマ程度に出題を絞り、テーマごとに問題点や課題、解決策を用意しておこう。(日経コンストラクション)

1.必須科目Iの論文内容

 本連載の第1回で紹介した通り、従来の択一式に代わって、今回の改正で必須科目Iの記述式論文が新設される(図1)。

改正前(~2018年度) 改正後(19年度~)
試験科目 問題の種類 試験方法 配点 試験時間 問題の種類 試験方法 配点 試験時間
必須科目 「技術部門」全般にわたる専門知識 択一式(20問出題、15問解答) 30点 1時間30分 「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力に関するもの 記述式(出題数は2問程度、600字詰め用紙3枚以内) 40点 2時間
選択科目 「選択科目」に関する専門知識および応用能力 記述式(出題数は回答数の2倍程度、600字詰め用紙4枚以内) 40点 2時間 「選択科目」についての専門知識および応用能力に関するもの 記述式(出題数は回答数の2倍程度、600字詰め用紙3枚以内) 30点 3時間30分
「選択科目」に関する課題解決能力 記述式(出題数は2問程度、600字詰め用紙3枚以内) 40点 2時間 「選択科目」についての問題解決能力および課題遂行能力に関するもの 記述式(出題数は2問程度、600字詰め用紙3枚以内) 30点
図1 ■ 総合技術監理部門を除く技術部門の筆記試験と口頭試験の改正内容(赤字部分)
総合技術監理部門については変更なし ※選択科目の試験中に休憩時間はなし(資料:日本技術士会)

 問題の種類は、「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力である。

 2問出題のうち1問を選択して、600字詰めの原稿用紙3枚に記述する。試験時間は2時間なので、それほど厳しくない。

 配点は100点満点中40点を占める。2019年1月に発表された合否基準では、必須科目と選択科目で、それぞれ60%と公表しており、配点はあまり気にしなくてよいだろう。

 図2に必須科目Iの内容を示す。

概念 専門知識
専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理などに関わる汎用的な専門知識
応用能力
これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて、問題や課題を正しく認識し、必要な分析を行い、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点などについて説明できる能力
問題解決能力および課題遂行能力
社会的なニーズや技術の進捗に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
出題内容 現代社会が抱えている様々な問題について、「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から、多面的に課題を抽出して、その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う
評価項目 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーションの各項目
図2 ■ 必須科目の出題内容
I 必須科目
「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力に関するもの(資料:日本技術士会)

 専門知識とは、建設部門全般にわたる知識で昨年までの択一式の内容と変わらない。ただし、問題解決能力も問われるので、出題範囲は「問題のあるテーマ」に限られてくる。

 応用能力とは「与えられた条件に合わせて」ということで、一般論で解答してはいけない。問題文で指定されている条件に合わせて記述する必要がある。例えば、人材不足のテーマで解決策を導く際に「今後、人材は増えない」という条件で書かなければならないと想像されるので、入職者を増やす方策ではなく、少ない人数でもできるような省力化施策(i-Constructionなど)を記述することになるであろう。

 問題解決能力とは、文字通り問題点を解決する能力であるが、問題点は理想と現実との差である。先ほどと同じく、人材不足というテーマで考えてみよう。理想は、少しずつ増えている建設投資に対する整備を全て実施することである。しかし、人が不足するので、整備ができないという現実がある。さらに、この4月から建設コンサルタント業界では残業に制限がかかり、今までにも増して工期遅延や入札不調などが生じる可能性がある。

 すなわち、問題解決能力を問おうとすれば、現状ではダメだ、というテーマが出題される。従って、「現状=問題点」でもある。理想とのギャップを埋めるために理想に向かって(正しい方向を向いて)取り組まなければならない。

 しかし、その取り組みに当たっては幾つも障害がある。これらが課題である。そして課題を解決する方法が解決策で、乗り越えていく能力を課題遂行能力という。この関係を図3に示す。

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 評価項目には「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーションの各項目」とされている。論文の試験で、技術者倫理やコミュニケーション能力をどのように評価するのか疑問だが、問題をよく読み題意に沿って、技術者としての倫理観で自分の意見を記述する、という当たり前の能力と思ってよい。

 この「技術士に求められる資質能力」の定義を図4に示す。これらの能力は以前から求められていたと考えられるが、より明確に求められるようになる可能性が高い。

図4 ■ 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
専門的学識
  • 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、業務部門全般にわたる専門知識および選択科目に関する専門知識を理解し応用すること
  • 技術士の業務に必要な、我が国固有の法令などの制度および社会
  • 自然条件などに関する専門知識を理解し応用すること
問題解決
  • 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査してこれらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること
  • 複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性など)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、または改善すること
マネジメント
  • 業務の計画、実行、検証、是正(変更)などの過程において、品質、コスト、納期および生産性とリスク対応に関する要求事項、または成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービスなど)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性など)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報などの資源を配分すること
評価
  • 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること
コミュニケーション
  • 業務履行上、口頭や文書などの方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザーなど多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと
  • 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的・文化的多様性を理解し、関係者との間で可能な限り協調すること
リーダーシップ
  • 業務遂行に当たり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害などを調整し取りまとめることに努めること
  • 海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者と共に、プロジェクトなどの事業や業務の遂行に努めること
技術者倫理
  • 業務遂行に当たり、公衆の安全、健康および福利を最優先に考慮した上で、社会、文化および環境に対する影響を予見し、地球環境の保全など、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位および職責を自覚し、倫理的に行動すること
  • 業務履行上、関係法令などの制度が求めている事項を順守すること
  • 業務履行上、行う決定に際して、自らの業務および責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと
継続研さん
  • 業務履行上必要な知見を深め、技術を習得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うこと
(資料:文部科学省)

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