第2回の記事はこちら

好評で迎えられた「赤い4気筒車」。片山豊、水野和敏、高橋孝治、「フェアレディZ」の開発に関わったメンバーの多くが「あれは最高だった」と振り返る幻の名車である。そう、「幻」になってしまったのだ。理由は米国側の根強い抵抗だった。

 「ビューティフル!」

 「この4気筒エンジンですよ。素晴らしいでしょ」

 「ファンタスティック!」

 「これがあったからこそ、このパッケージが実現できたわけで」

 

 「OK、それはよく分かった。で、6気筒バージョンはいつ出すんだい」

やっぱりそうきたか

 米国人ディーラーの質問に湯川伸次郎は絶句した。この車体は4気筒エンジンを搭載することを前提として設計したもの。車体に6気筒エンジンを押し込む余地はない。

「高性能版はいつ」「コンバーティブルはいつ」「ターボはいつ」…。

 新車を出せば必ず受ける質問だ。「6気筒」もそのうちの1つ。だから、ある程度は予期していた。それにしても、今回は多過ぎる。赤い4気筒車を展示するたびに同じ質問の繰り返しなのだ。

「6気筒はいつから?」「6気筒の出力は?」「6気筒のターボは?」。

 湯川は「フェアレディZ(以下、Z)」のマニア、いわゆるZマニアの思いを嫌というほど知らされた。1969年以来ずっと6気筒でやってきたZを見ているファンには「Zイコール6気筒」というイメージが出来上がっている。それを旧弊として退けるべきか、それとも逆に利用すべきか。

湯川伸次郎
「Zといえば6気筒、ロングノーズ、ハッチバック。根強かったですねえ」と語る。(写真:栗原克己)
[画像のクリックで拡大表示]

 喜ぶべきとはいえないが、悩む時間はたっぷりあった。プロジェクトが前に進まないのだ。

 「三現主義作戦」の意図通り、首尾良く役員連中を赤い4気筒車に乗せることができた。これで役員の態度が急変したのも狙い通り。けれど、それは「良いね」であって「すぐやれ」ではない。当時、ホンダの「オデッセイ」がヒットしており、日産自動車社内には「RV(レクリエーショナルビークル)で出遅れた」という危機感が渦巻いていた。RV最優先。それ以外の全てのプロジェクトは棚上げになっていたのである。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら