リーダーがうまく褒めれば、メンバーの積極性を引き出し、チームが活気づく。だが、いざ褒めようとすると意外に難しい。3日間で、上手な褒め方をマスターしよう。

 外資系コンサルティング会社で「褒め上手のプロジェクトマネジャー」と周囲から評されるAさん。週に1回、メンバー一人ひとりについて、頑張った点や成果を上げた点、成長の跡が見られる点などを洗い出し、会って褒める。この褒める習慣が、冒頭の評判につながっている。

 そんなAさんも以前は、褒め上手でなかったという。「メンバーを褒めることの重要性に気付かず、叱ってばかりのこともあった」(Aさん)。

 転機となったのは数年前、要件定義のプロジェクトでメンバー20人を率いたときのことだ。当時のAさんは、プロジェクトマネジャーになって2年目。それまで、メンバーが数人の小規模なプロジェクトのマネジャーを務めた経験しかなかった。「今回のプロジェクトはマネジャーとしての力量が問われる試金石」と考え、より厳重にメンバーを管理することにした。

 週次ミーティングで、メンバー一人ひとりに割り当てたタスクの進捗や問題を細かく報告させた。その際、スケジュール通りに進んでいて問題のないタスクについては特に言及せず、遅れていたり問題が生じていたりするタスクがあると、その担当メンバーに「原因は何か」「どういう対策を打つのか」と問いただした。Aさんは感情的にならず冷静さを保つように意識したが、冷ややかに問い詰められメンバーは萎縮していった。

 次第に、メンバーの多くは進捗が遅れないように、情報収集や合意形成が不十分なままタスクが完了したと報告するようになった。そのため、あとになってユーザーが「検討が不十分だ」「合意した覚えはない」と不満を訴えてくることもあった。

問い詰めるだけでは溝ができる

 この状況に危機感を覚えたAさんは、「自分とメンバーの間にできた溝を埋めなければ」と思った。溝があると思ったのは、これまでのプロジェクトと違って、メンバーが誰もAさんのもとに相談に来ないからだ。

 その原因は、メンバーを問い詰めるばかりの自分のマネジメントスタイルにあるのかもしれないと疑った。だとすれば、問題が生じているタスクについて問い詰めるだけでは駄目。うまく行ったタスクについて、メンバーを褒めることが重要だと考えた。

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褒めていない状態と褒めた状態
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 褒めることを意識したのは、それからだ。日ごろから積極的に声がけして各メンバーの状況の把握に努めると同時に、予定通りに問題なく仕事ができたことを逐一、「このタスクはスケジュール通りだったね」「このドキュメントは、ここまではちゃんとできているね」と褒めるようにした。

 すると、メンバーが相談に来るようになったのに加え、メンバーが少しずつ自信を持って積極的に仕事に取り組むようになり、チームの雰囲気が変わっていったという。それを象徴するのが、週次ミーティングの変化だ。

 問い詰めるばかりだったときは、メンバーの発言は報告ぐらいで、いつも予定より短い30分ほどで終わっていた。しかし褒めるようにしてからは、1人のメンバーが抱える問題について、他のメンバーが物怖じせず対処策のアイデアを出すようになり、建設的な議論で会議時間が延びるようになった。

 その結果、要件定義は計画期間で完了し、後続工程の受注にも成功した。褒めることの重要性を痛感したAさんは、それ以降、「褒めることを自分のマネジメントスタイルの中核に据えるようになった」という。