2018年に8月にニコンが満を持して発表した新世代ミラーレス一眼カメラ「Zシリーズ」。同社として初めてフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラで、口径55mmの新マウント「Zマウント」を採用し、「ミラーレスの撮影フロー」に最適化した操作体系を新開発した野心作だ。同シリーズに込めた作り手の思いを4回にわたってお届けする。

 第3回は、カメラの心臓である光学系の設計を担当した鈴木剛司氏(同社光学本部 第三設計部長)を中心に、Zマウントの新開発レンズ「NIKKOR Z」や、Fマウント用レンズ「NIKKOR F」をZシリーズで利用可能にするアダプター「FTZ」の設計について聞いた。

Zのレンズは動画撮影を意識、「隠れた進化」あり

Zマウント向けの「NIKKOR Zレンズ」では、レンズ側の操作リングなども大胆に変わっています。ユーザーインターフェース(UI)の観点から、これまでのシリーズになかった特徴は何ですか?

「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」
2019年2月14日に発表されたNIKKOR Zの1本。最もボディー側に新設されたのが「コントロールリング」(出所:ニコン)
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光学系設計担当の鈴木剛司氏(以下、鈴木氏):Zマウント専用のNIKKOR Zレンズでは「コントロールリング」と呼ぶリングを新たに追加しました。このリングを使うとEVF(電子ビューファインダー)を覗きながら露出補正やパワー絞りの調整が可能です。またユーザーの好きなように機能をカスタマイズして割り付けることもできます。UIの観点ではこのリングの追加が従来レンズとの最大の違いです。

ニコン 光学本部 第三設計部長 鈴木剛司氏
第三設計部は映像事業部が管轄するデジタルカメラなどを担当。ニコンZシリーズ専用であるNIKKOR Zレンズの設計も担当した。(写真:栗原克己)

デザイン担当の橋本信雄氏(以下、橋本氏):もう1つ、Zマウントレンズでは、リングを操作したときのクリック感や操作音を排除しています。動画撮影を考慮したためです。

鈴木氏:NIKKOR Zレンズは今後、動画撮影の需要が増えるのを前提に設計しました。操作時の静粛性もそうですが、ブリージングにも配慮しています。ブリージングとは、ピントの調節で起こる画角変化です。NIKKOR Fレンズをはじめとしたもともとスチルカメラ向けに開発された一般的なレンズは、ピントがズレた状態から合焦するときに、かなり画角が変化します。

 この問題は動画に限りません。一定の構図で撮影する場合、ピントが合う→画角が変わってズームを調整する必要が出る→またピントを合わせる→またズームを調整……、という手間を何度も踏む手間が生まれかねません。こうしたブリージングによる構図の変化の排除が、実はNIKKOR Zレンズの「隠れた進化部分」です。

ニコン 映像事業部 デザイン部長 橋本信雄氏
ニコン製品全般のボディー外観やUI、外箱などのデザイン全般を手がける部署を統括。ニコンZシリーズでもそのとりまとめを行った。(写真:栗原克己)

特に16:9の画面では顕著に違いが出そうですね。

鈴木氏:そうですね。広角で「ここまで入る」と構図を決めて撮影を始めたのに、至近距離に人が入ってくると、いきなりブリージングで拡大が起こったりするのです。特に動画では、そのブリージングで画角がガクガクと動いてしまい、とても見づらい。

 Zマウントレンズでは、撮影された映像から見づらさを排除する工夫も施しています。ブリージングを極力抑えてはいますが、厳密にはゼロではありません。それでも動画撮影のプロのかたに評価していただけるだけの精度は実現できたと自負しています。

動画を撮るならやはりZシリーズのボディーにNIKKOR Zレンズが最適なのですか?

鈴木氏:実はそうとも言い切れません。というのも、手ブレ補正機能(VR)付きのNIKKOR Fレンズをマウントアダプター「FTZ」を介してZシリーズのボディーに装着した場合、本体の手ブレ補正に加えてレンズ側の手ブレ補正も同時に機能して相乗効果が生まれます。ローリングと呼ばれる光軸が回転する方向の手ブレなど、Zシリーズになってボディー側の手ブレ補正ならではの強みが生まれました。それを活かしたうえで、さらにレンズによる光学的な補正も活用できるので、手持ちで動画撮影するような場合には高い効果を発揮します。

 現在出荷済みのNIKKOR ZレンズにはVR機構が入っていません。しかし、今後発売される望遠系のレンズでは、VR機構を内蔵する予定です。望遠レンズは手ブレしやすいので、レンズにも補正機能が望まれるためです。そのレンズが発売されるまでは、レンズとボディー双方の手ブレ補正機能が相乗効果を発揮するのはNIKKOR Fレンズだけになります。

Zシリーズの画像センサーとその背後に装着される手ブレ補正ユニット
レンズから入ってきた光をペンタプリズム部分へと導くミラーがない分、ミラーレスではボディー内のスペースに余裕が生まれる。そこで画像センサーに手ブレ補正機構を組み合わせ、ボディー内手ブレ補正が実現できる(出所:ニコン)
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